リレーコラムについて

申 YEAR OF THE MONKEY

川見航太

「あなたは、何の仕事をしているんですか?」
ミュージシャンの知り合いに、そう聞かれたことがある。

広告のコピーライターです、
企画とかもやってます、
こういうクライアントさんの仕事をしていて、
多いのはこんなメディアですかね、
でもこういうのもやっていて、

長いし、つまらない。
でも、そう答えていた自分がいた。

「どんな音楽で、どんなライブをしていて、
今こういうことを感じているから、
これからはどんな曲を作りたいと思っているんだ」
そんな風にシンプルに、
自分の仕事を語れたらどんなにいいだろう。

2015年、僕にはひとつ決めたことがあった。
もう一度、コピーライターとして
一から自分を鍛え直そう。
そのための、最高峰はどこだろう。
コピーライターの友人が、
「人生が変わった」という講座があった。

谷山クラス。

正確には、
「コピーライター養成講座 専門コース 谷山・井村・吉岡・照井クラス」。
僕はここでの半年間、そして延長した一年間を、
一生忘れることはないだろう。
たとえ記憶がなくなったとしても、
事あるごとに思い出させる仲間が今もいるからだ。

半年間の、これまた濃密な講義を経て、
結果的に僕は、谷山クラスでの最終課題において
東急ハンズさんの仕事をさせていただくことになり、
井村光明CD、関谷奈々ADのもと、
がしがしと鍛えていただいた。
(相当ダメ出しされた)

関谷さんは、ルミネなど美しくスタイリッシュな企業広告を
手がけるアートディレクターとしてよく知られるが、
その一方で、ものすごく「手」の力が強い方だ。
ビジュアルの中の「ダンボールでつくれるモノ」はCGやイラストではなく、
すべて関谷さんの手づくりによる実物の写真である。
隣で見させてもらうと分かるが、自分の手で
あれほど端正にものを作る方はなかなかいない。
だから、ルミネの写真のセットは
細部まで神経が行き届いており、
その基盤があるからこそ、誰もが息を飲む
世界観を創ることができるのだと知った。

井村さんからは、
企画をジャッジすることはもちろん、
言葉ひとつひとつの目的と意味、
世界観を作るべきところと、伝わることに徹するところ、
心を盛り立てるときに必要なTPOなど
コミュニケーションのつくり方について
多くのことを学ばせていただいた。

また、谷山クラスの最終課題プレゼンは
受講生約40人のバトルロワイヤル状態になるのだが、
メンターとしての井村さんは基本的に、
自分が担当した全員を優勝させようと考える。
ホームランを狙うぐらいでやっと当たり前という、
崖っぷちを突きつける師でもあった。

深夜に及ぶ撮影の帰りのタクシーで、
井村さんから聞かれた。
「川見はいま、仕事なにやってんの?」

僕は、ブランディングや企画を手伝っている
兵庫県姫路市の皮革会社(タンナー)、山陽について話した。

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父が代表を務めている会社で、
最初は、古いホームページのリニューアルだけだったのが、
新しいものづくりを考える
面白いプロジェクトになりつつあった。
スローガンは、
「MAKER’S LEATHER. つくる人の革を、つくる。」

「それは、ダンボールの企画と通じるものがあるね。」
反応は一瞬だった。

「ものをつくる」ということを、広める。
それも、まだ広がっていない場所で。それが共通テーマだ。
簡単すぎてはつまらない。
その共通点を見抜いていただいたことは、
とても興奮したし、嬉しかった。

2015年の末、
申年の年賀状のイラストについて
アートディレクター/イラストレーターの大宮さんと
飲みながら話し合ったのは「つくる」ということだった。

じぶんにとって、「つくる」とは何か?
その時点で、言えると思えることだけを書こうと思った。

文の最後に、
ニワトリが夜明けを告げて鳴く。
それは、TCC新人賞への個人的な、切実な願掛けである。

井村さん、関谷さん、あらためて、ありがとうございました。

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