魔女になりたい
「ひみつの魔女っ子入門」
それは小学生のわたしにとって、魅力的すぎるタイトル。
祖母に頼み込んで買ってもらったその本を
ハードカバーが変形するくらい読んで
わたしの魔女修行の日々がはじまりました。
魔法の杖は、図工の時間に余った木材で製作。
(ほんとうは、満月の晩に切りとりに行かなければならないらしい)
本に載っている呪文を片っ端から暗記。
(「クルシカクルシカベサベサ」は精霊をよびだす呪文、とか)
人体の可動域を明らかに超えている、ヨガっぽい瞑想。
(片手で全体重を支える、みたいな無茶なポーズもあった)
1年くらい続けていたと思うのですが
この修行で魔法が使えるようになったかというと、
まあそんなわけもなく。
でも、「騙された!」とは一度も思いませんでした。
なぜならこの本には、魔女修行の方法に加えて
こんなことばが書いてあったからです。
*****
<魔女の心がまえ>
1) 魔女は、自分の信念をしっかりと持つ。
そして、はっきりと確信の持てないことや、よくわからないことは、
人の意見にまどわされずに、きちんと調べてから行動すること。
2) 魔女は、いつまでも過去にわずらわされない。
反省することは必要だけれど、イヤなことは、すぐ忘れること。
3) 魔女は、人のしあわせをねたまない。
4) 魔女は、約束をかならず守る。
5) 魔女は、三日ぼうずにならない。
はじめたことは、かならずやりとげること。
6) 魔女は、能力を高めるために、きびしいトレーニングにもたえる。
*****
そりゃ魔法使えないわ、と。
だってわたし、これひとつも守れてないもの、と。
友達とけんかはするし、悪口も言っちゃうし
昔されたひどいことを、いつまでも覚えていたりする。
憤りを勝る、後ろめたさ。
いま思えばこの本は、子ども向けの自己啓発本だったわけです。
魔女とは理想の自分、理想のおとなのことでした。
いつのまにか修行もしなくなって
魔法の杖もどこかにいってしまって
けっきょく魔法は使えないまま。
しょうもない失敗や後悔をするたび
あの本のことを思い出しては、魔女の6か条を守るのが
実はおとなでもすごく難しいということを痛感するのでした。
ちなみに、
ふとAmazonでこの本を検索したら、
絶版のため7000円で売られているらしいです。
売却、の二文字が即座に浮かんで
やっぱり魔女にはなれないと思いながら
この文章を書いています。
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