墓石
フランスの作家、スタンダールの墓には
こんな言葉が刻まれているという。
生きた、書いた、恋した。
ドイツの哲学者、イマニュエル・カントの墓石にはこうある。
星空は我が頭上に。道徳規律は我が内に。
オーストリアの物理学者、ボルツマンの場合はこうだ。
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そして、我が保持家である。
愛媛にルーツをもつ保持家の墓を
東京に移すことになったのは今から10年ほど前のことだ。
もろもろ母親に任せっきりではあったが、
無事に改葬を終えたとの報を受けさっそく墓参りに出かけた。
そして異変に気づいた。
保持家、と書いてあるべき墓石の真ん中には、
愛
という一文字がドカンと刻まれていた。変な明朝体で。
“保持家”の文字は、その足もとに小さくレイアウトされている。
まじか。
そんなわけで僕が死んだら、
愛に生きた男として思い出してやってください。