友達がいなかった
友達が、ひとりもいなかった。
1998年、15歳の時だ。
とある事情で、言葉の全く通じない異国に単身送りだされた僕は
元来の人見知りも相まって、友達がひとりもいなかった。
だから夕方に学校が終わったら
そそくさと下宿先に帰る日々。
放課後にだべったり、街に繰り出したりする
同級生達が眩しかった。
誰とも話さない数ヶ月。
自己嫌悪とホームシックに侵食されていく僕は
ふと机の上のPCに目がいった。
あると便利、ということで
親が持たせてくれたVAIOだ。
人間、追い詰められると何を考えるかわからない。
僕は「人間がダメなら、コイツでいいじゃない」と思い立ち、
このVAIOと友達になろう、と決めたのだ。
・・・と、ここでコードやプログラミングを学び始めたら
ザッカーバーグよろしく、華々しい人生のはずだったんだけど、
僕はPCと友達になる方法をずいぶん間違えてしまった。
僕はあろうことか
「ショートカットキーを暗記する」という謎の行動に出てしまったのだ。
ショートカットキーはご存知の通り、
”alt+F4”プログラム終了、”Ctrl+s”保存みたいなやつで、
それを覚えるのがいちばんクールだと当時の僕は本気で信じてた。
ルーズリーフに、
調べあげたショートカットキー&短縮キーを丁寧に記入して、
便座の前のドアに貼る。
そしてトイレに行くたび、
それを眺めながら頭の中のキーボードでイメトレを繰り返す日々。
時折、定期試験として、下記のようなタスクを自ら設定。
”wordを立ち上げ→hello.docと保存→wordを終了→
windows explorerからhello.docを立ち上げ→hello2.docとリネーム→シャットダウン”
それをマウスなしで(つまり短縮キーのみで)遂行できるか
みたいな生産性が皆無な作業を日々やっていた。
怠惰な人のための機能であるショートカットキーを
こんなに手間暇かけて習得するという、
矛盾を抱えた一連の作業だったけど、
たのしかった。
PCと会話しているみたいだった。
ショートカットキーをバシッと決めた瞬間は
まるでPCとハイタッチしている気分。
そうなんだ、人間は何とでも友達になれる。
大空翼はサッカーボールと、僕はPCと。
そう考えれば人生はもっと豊かになる、と気づいた
Ctlr+zできない僕の青春のお話でした。
そんな僕の一番お気に入りの
短縮キーコンボを紹介させてください。(ショートカットキーとちょっと違うけど)
Windowsのwordで作動します。
alt→t→w
この3つのシンプルなキーを3つタンタンタン!と押すと
へぇーというボックスが現れます。
コピーライターにオススメの機能です。
ぜひお試しください。
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