リレーコラムについて

戦争が始まる前に読んでおきたい3冊の本

熊谷卓彦

みんなの生活に身近なことでも
業界の人じゃないと本当のところはわからない、
ということがあります。

広告もそうで、
タレントさんの出演料やメディアの出稿料の相場といった
割とシンプルな情報もそれほど知られておりません。
クライアントの課題や表現の意図といった込み入ったことは、
業界どころかその現場にいないと
本当のところはわからないかもしれません。
それでも人は広告に反応して行動し、話のネタにすることがあります。
広告の裏事情がわかったところで
誰か幸せになるわけではないのでそれで良いのですが。

戦争や外交にも、そんなところがあります。
報道されることの裏で、どんな交渉がなされているのか。
どんな意図を持った発言なのか。
素人には想像するしかありません。

戦争ともなると、家族の命に関わってくるので切実です。
でも、個々の兵器のスペックすら素人にはわかりません。
軍事的な課題や装備品の意図はもちろん、
各国の本当のところの軍事力なんて分かりようもありません。
国々の指導者たちが何を考えているのかも想像するしかありません。

脅威は高まっているといいますが、何が、どう高まっているのか、本当のところはよくわかりません。
一方で、核兵器は抑止力になれども使われることはないよ、
と思いたくても、人間は過去にやれてしまっていますし。

もし今が本当に戦争前夜だとして、
こんな時に読むべき本ってどういうものなのでしょう。
本当にぼんやりと考えてみました。

一つは、やはり『はだしのゲン』。
学校の前でゲンは被爆しますが、塀に守られ生き残ります。
一緒に話していた女性は光を浴びて亡くなってしまいます。
生死を分けた状況が、他にいくつも描かれています。
今の核がどんなものか全くわかりませんが、
これが参考になる時はすでに九死に一生を得るかどうかの状況下ですので、
わずかでも可能性があるならば。
それと、広島と長崎の記録以外、都市の核爆発の記録がないことを思うと、
ここから学ぶしかないような気もするのです。

余談ですが、この漫画は反戦反核などの思想的な要素は横に置いたとしても、
人の心を打つように描かれているなあと思います。
なんとなく避けていたり、最後まで読んだことがなければ、もったいないかもです。
物語後半、隆太がムスビの仇をとるところなど、たけし映画ばりの暴力の切なさかと。

あとはどうでしょう。
ふと思い出した、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」。
愛と恋と韻と。
今の教科書にもまだ載っているのでしょうか。

最後に、中井久夫さんの『「昭和」を送る』の「戦争から、神戸から」。
この文章を紹介したくてこのコラムを書いてきたような。
精神科医で、詩人の著者が、阪神大震災と、戦争と、東日本大震災を語った短いエッセイです。
災害に見舞われた人が何を思い、何に救われ、未来に何を思うべきか、照らしてくれます。

他に、この本は?
というものがあればご紹介ください。

NO
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