リレーコラムについて

もう一度

道山智之

風邪をひいている。
ああ、風邪がくるな、とわかって身構える。
予防注射はしたばかりなのに。
ぐっすり寝て、いったん落ち着く。
でもそれからヘントーセンがはれて、
そのあと鼻風邪になって、
フィニッシュに気管支がゼーゼーいいはじめる。
またフルコースだ。

予防をしても、薬を飲んでも、
いつもどおりに進む。
何度経験しても、
また同じことをくりかえす。
今日はそう思う。
でも数日前、風邪を予感した直後は、
「今回はぐっすり寝たら汗かいてすっきり治ってるんじゃないだろうか」と
希望を抱いた。
ほとんどそうなるだろうと思った。

希望は忘却ととなりあわせにある。
何度おなじことをくりかえしても、
「今度こそは」と思えるのは、
いつも同じ経過をたどることを忘れているからだ。

***

いい写真はひとつのことにフォーカスが来て、
あとはぼけていることがある。
ぜんぶにピントがあうこと=いい写真とはかぎらない。

最近はメールをはじめ、
絶対忘れないAI氏がいるから、
時々なんだかぼくらは氏につかわれているような気になる。
彼らは忘れない。
挑戦しようと思っていきおいあまったときのミスも、
つい虫の居所のわるかったときのメールも。
水に流すということはない。

ぼくらはボケる写真を好み、
たまには水に流して笑いあうことをよろこぶ
(もちろん忘れてはならないこともある)。

忘れる力はきっとぼくらのつよさ。
そしてそれは、ほんとうにたいせつなことを、
ひとつだけおぼえておくための
最強最短の戦略でもある。

AI氏が「忘れること」をおぼえたとき、
さんざんぼくの尻をたたこうとした
今までのことは水に流して、
友達になれるのかもしれない。

***

たとえ何十回目でも、
「もう一度」と思う気持ちのなかには「一」という言葉だけ。
なしとげたい気持ちがあれば、
複数をほんとうに自分に必要な単数にできる。

その単数のためなら、
人はどうでもいいことを投げ出して、
きつかった経験もひととき忘れて、
夢中で走っていける、はず。

もう一度は
永遠に
もう一度、だ。

***

TCC同期の天田武史くん、
リレーコラムのバトンをくれてほんとうにありがとう。
この1週間でなければ、
もしかしたらずっと言葉に結晶させなかったかもしれなかった、
「2」と「1」についての考察。
言葉はあらためていいなと思った。

そしてぼくのバトンは、
笑顔がすてきな原智史くんにわたします。
彼もTCC同期です。

年末年始をはさんで、
原くんのコラムは1/9から、と聞いてます。
どうぞよろしくね。

みなさん、今年も暮れてゆきますね。
来年もいい年でありますよう、こころから。
Happy Christmas & Happy New Year for you all!

道山智之

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