リレーコラムについて

銭湯。

三井浩

場所がら、銭湯にはよく行きます。
墨田区内に現在、銭湯は19あって、夕方から夜、
場所によっては深夜まで営業しています。
私のよく行くお湯は、東京スカイツリーのすぐそばにある薬師湯。
広さなど、標準的な銭湯ではないでしょうか。

私の子供の頃は、もっと多くの銭湯がありました。
昭和40年で墨田区には113あったと資料には書かれています。
町内に1つ銭湯がある。そんなイメージです。

履物を脱いで、男女別の暖簾をくぐると、
高い場所に店の夫婦、老夫婦が交代で座っています。
湯賃を払うと脱衣場に籠があり、そこに脱いだものを入れ、
風呂へと入ったものです。
いま思い出すと、ロッカーなどないわけですから、無用心、甚だしい。
盗みを目的に銭湯に来る人も、その時代、確かにいたそうです。
でも、それを見張るのが、高い場所に座る「番台」の役割です。
いちばん見晴らしのいい場所から、脱衣場すべてを見渡す。
人の目が安全を確保していた時代です。

でもその番台も、ほとんどの銭湯で姿を消しました。
脱衣室にはロッカーが設備され、貴重品も受付で預かってくれます。
初めて銭湯に入る女性が気になるのが、番台の目だったそうです。

実は、銭湯愛が高じたのか、去年の秋、
地域のクリエーターと協力して「銭湯バカンス」という
イベントを開催しました。
銭湯でのDJではみんな踊っていました。チェロの演奏会、将棋大会、
ヨガ、銭湯をランステ替わりにしたラン会、団扇に似顔絵、などなど
銭湯の「場」を借りた手作りのイベントになりました。
地元の銭湯に頑張ってほしいという気持ちと、
銭湯の良さに気づいてほしいという気持ちが、一緒になる瞬間でした。

俗に言う集客数、などからすると微々たる効果しかありませんでしたが、
銭湯店主とお客の笑顔が、なによりうれしい2ヶ月になりました。

コピーが評価される、物が売れるのも、広告ですが、
喜んでくれる顔をすぐ隣で見られるのも、
広告に携わるから味わえる醍醐味のような気が、改めてします。

いまの銭湯は、手ぶらで行けます。
薬師湯では、大小タオルを借りて、ちょうど500円。
アイディアに詰まると、私はそそくさと銭湯に浸かります。
上がって、冷えた麒麟淡麗200円を飲めば、アイディアはどこへやら。
今日はどこの居酒屋へ行こうかと、考えるばかりです。

町のゆとりが、そこにあります。

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4394 2018.02.01 銭湯。
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