書くインタビュー
本について書かれた本が好きだ。
最近だと佐藤正午の「書くインタビュー」が面白すぎた。
東京で働くライターと長崎に暮らす小説家の
メールのやりとりのみで構成された
前代未聞のインタビューだ。
小説作法からその背景にあるものまで広範囲に及ぶ
ライターの質問に
そんなにつまらないことを聞かれても困る。
その無自覚な質問に付き合いたくもない。
と容赦なく返す作家。
最初のインタビュアーは気難しさに
やられて挫折する。
代わったインタビュアーがなんとかくらいつく。
作家の機嫌はだいたい悪い。
いつインタビューが終わってもおかしくない緊張感。
ひりひりする。
作家の気持ちもわかる。
インタビュアーの気持ちもわかる。
インタビュアーの質問に怒りをにじませながら
それでも作家は、
自分の文体の秘密や
小説へのアプローチを
噛んでふくめるように開示していく。
とても内容のある素晴らしい本だ。
ふと、
ライターのひとたちは元気にやっているだろうかと
心配になって
僕はクライアントに向かうタクシーのなかで
彼女たちの名前を検索した。
その瞬間、僕は声を出していた。
「嘘だろ」
ふたりの名前はどこにもなかったのだ。
もしかしてこれはすべてこの作者の創作なのか。
嘘だろ。。。
佐藤正午。
なんと恐ろしいひとが
この世にはいるのだろう。