YOYOGI UEHARA の秘密
東京メトロ千代田線に乗っていて、
終点・代々木上原に到着するときのことである。
プラットホームの逆サイドは壁(防音フェンス?)になっており、
そこにでかでかと「YOYOGI UEHARA」と書かれている。
電車の窓からこれを見るたびに僕は、
不思議な安らぎを感じていた
(誤解なきよう言っておくと、僕は代々木上原に
住んでいるわけでも住んでいたわけでもない)。
何を言っているのか意味が分からないと思う。
僕も最初は、分からなかった。
でも言葉通り受け取ってほしい。
「YOYOGI UEHARA」という表示に、
やさしく包み込まれるような気持ちになる僕がいる。
なんでだ? この安らぎの正体はなんなんだ?
「代々木上原」という表示には全く何も感じないのに。
最初に思ったのは、ここに掲げられた
アルファベットのフォント(書体)が
自分の生理に合うのかな、ということだ。
仕事柄というか、幸い、フォントオタクみたいな人間が
職場にはいるわけで、まあアートディレクターのことですが、
彼らの知見を仰ごうかとも思った。
写真を見せるなりして、このフォントについて
語ってもらえれば、何か発見があるかもしれない。
しかし、実際に代々木上原駅で降りて分かったのは、
まったく違うフォントでも、
ほぼ同じ効果がもたらされるということだった。
駅の建物には(駅以外にも)
いろんなサイズやフォントの「YOYOGI UEHARA」があり、
もっといえば「Yoyogi Uehara」のように大文字・小文字が
混ざっている表記も見られたが、
どうやら、そのすべてに心が和らぐようなのだ。
なんだこりゃ。
となるとデザインワークの問題じゃないんだな。
このアルファベットそのもの、
あるいはこの文字列そのものに何か秘密がある。
そう見当をつけてから、1年ぐらい経った。
何かほかの固有名詞に同じような効果を感じたことは、
一度もなかった。
あるとき、
海外の広告賞へのエントリー手続きだったか、
オンラインでのクレジットカード決済だったか忘れたけど、
自分の名前をアルファベットで記入する機会があって、
パソコンのキーボードで
「YOHEI」半角スペース「UGAERI」とタイピングしながら
ハッとした。
これだ。俺の名前だ。灯台下暗し。
YOYOGI UEHARA問題の答えは、
自分の名前にあったんですよ。
YOYOGI UEHARA
YOHEI UGAERI
使われているアルファベットが過不足なく一致している。
言い換えると、どちらも
A、E、G、H、I、O、R、U、Y
だけで構成されていて、それ以外の文字はない。
まあ各アルファベットの使用回数は同じじゃないから、
これはいわゆるアナグラム(並べ替え)
ってわけではないんだけれど。
でも、構成要素が同じ。
母音や子音という視点で見れば、
二者は同じ音素で出来ている、とも言える。
そりゃ心地いいわけだ。
生理食塩水やポカリスエットが体液に合流するように、
生理的に馴染むのも当然っちゃ当然だ。
場所じゃなくて、地名そのものに”ふるさと”を感じたりして。
代々木上原のホームはもう、
platformというよりhomeって感じで。
代々木上原よ。
君のEが欠けた時は、僕のEを使うがよい。
その代わり僕のYが欠けたら、2個あるYを1個よろしく。
とか思ったりして。
「太古、代々木上原と魚返洋平はひとつであった」
なんてナレーションも脳内で流れたりして。
「AEGHIORUY(なんて読むんだ、エージオルイ?)は
進化の過程で、地名と人名とに分岐した」って。
こんな地名に出会えた私は幸せだ。
もう勢いで「私」とか言ってみた。
私になりそびれたくせに。
(参考 : https://www.tcc.gr.jp/relay_column/show/id/4418)
あなたはどうでしょうか。
あなた(の名前)にとってのYOYOGI UEHARAが、
この世界のどこかでじっと待っているかもしれない。
なんだか楽しみですね。
あと1日、よろしくお願いします。
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