天狗
ひとりで高尾山に行ったときのこと。
地道に足で下山するのが面倒になってリフトに乗ってみることにしました。
眼下には人の気配がしない山の斜面が広がるのみで、リフトはかなり高いところを進みます。
乗って初めて気づいたのですが、スキー場と同じような簡素な椅子型のリフトは、
下り方向だと常にずり落ちそうな体勢になるのでなかなか怖いのですね。
安全ベルト的なものもなく、それが結構容赦のないスピードで進むので、
落とされないよう手すりを掴む手にも力が入ります。
リフトを支える鉄柱が、等間隔で過ぎ去っていくのを目で追っていると、
中盤まで進んだところで今までの柱にはなかった看板が現れました。
「次の柱でしゃしんを撮るよ!」
遊園地のアトラクションみたいに自動で撮られるやつか、どうせ買わないし、ひとりだし、写るのやだなあ、
などとぼーっと考えていたら次の柱が見えてきました。
柱に差し掛かろうとした瞬間、物陰から突然カメラを持った男性が現れ
「えっ」
と一瞬パニックになった瞬間「パシャ」という音が聞こえ男の姿は再び森へ消えました。
写真は買いました。
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電通でアートディレクターとCMプランナーをしている室井友希といいます。
一週間私の慣れないコラムを読んでいただき、
どうもありがとうございました。
次は同じ会社の先輩である橋口幸生さんにバトンをお渡しします。
知的な空気感のある橋口さんは映画にとても詳しくて、
私はおすすめを教えてもらうのが好きです。
橋口さん、よろしくお願いいたします。