恐怖の逆ギレ男
ヘンな臭いがした。
とてつもなくヘンな臭いだ。
25年前の小学校。1年2組の教室。
2時間目と3時間目の休み時間。
臭いの元は、となりの1組かららしい。
興味をもった僕は、1組の引き戸を開けた。
その瞬間、目に飛び込んだものは、
生まれて初めて見る修羅場。
鼻血を出して泣きじゃくる同級生の固まりだった。
臭いの元の張本人S君が逆ギレして、
クラスの全員を殴っていたのだ。
大変だ。
そう思った瞬間、僕はSと目があった。
いまのSには動くものすべてが攻撃対象になる。
待てえー!
Sが来た。僕は一目散に逃げた。
廊下の角を曲がり、後ろを振り返る。
Sがドリフトしながら追いかけてくる。
ダミアンに見えた。
つかまったら何されるかわからない。
僕は牛乳置場から外に逃げようと思案した。
外に逃げればどうにかなる。
大人に助けを求めることもできるかも知れない。
しかし、どういうわけかドアが開かない。
回らないノブを必死に回そうとする僕。
真後ろに迫るダミアン。
結局、僕はつかまり馬乗りになって殴られた。
僕は泣いた。
痛さよりもSのおしりのぬくもりに。