隠れ営業志望の男 その3
「じゃ、明後日テストがあるので来てください」
テストって何だろ?まあきっと、漢字の書き取りかなんかだろう。
という程度の貧困な想像力しかなかった。
実際はですね、かなりてんこ盛りの内容。当たり前だけど。
コピーやら長文やら漢字やら、いろいろ書かされた。
何書いたなんて全然覚えてないが、何も知らない者のひらきなおりで、
そうとうデタラメなことを書いた気がする。
1週間後、電話がきた。
「内定しました」
本気かよ、この会社!でもなんか、涙が出そうな気がした。
いそいであの先輩に報告しなきゃ。
俺を救ってくれたあの人に!
昼間だったし、オフィスに電話してみた。
「ああ、彼は3日前に辞めましたよ」
その人は、コピーライターを廃業した。
俺ってやばい世界に足をつっこんだ?
やばいに決まってる、そもそも営業志望なんだよ俺。
これを書いていると、あの頃の情景が鮮明に思い出せる。
選択の余地のない人生がいよいよ始まった。
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