眠る眠る
これなら他人に勝てる、というものを
俺はひとつだけ持っている。
睡眠だ。
正直に告白するが、俺は数ある人間の欲望の中で
ダントツに睡眠欲が強い。
食欲、性欲、物欲、出世欲、エトセトラ。
そんな俗世間の欲望など、
俺の睡眠欲の前ではカスである。
他を引き離してぶっちぎりの第一位、
それは俺の睡眠欲。
三十路も半ばを過ぎたある日のことだ。
俺は右肩に経験したことのない違和感を覚えた。
腕を上げようとするが、
右肩に鈍痛のようなものが走り、
まったくあげることができない。
仕方なく、生まれて初めて整骨院へ
行くことにした。
レントゲンを撮り、右肩が脱臼していることが
判明する。
原因のわからない病ほど、
人を不安にさせるものはない。
なにしろ俺には、まったく身に覚えがないのだ。
医者も不思議がる。
いくつかの質問の最後に、
睡眠時間を尋ねられた。
素直に答えた。
「物心ついた時から、ずっと9時間です」
医者は笑いながら、ズバリ原因を指摘した。
「あんた、そりゃ、寝過ぎだ」
寝過ぎによる脱臼。
なんと素晴らしい響きだろう。
ツジツマが合い、ホッと胸をなでおろす俺。
原因さえわかってしまえば、
もうこっちのものだ。
1週間後、今度は左肩に違和感を覚えた。
再び整骨院を訪れ、レントゲンを撮る。
案の定、脱臼している。
そして医者は、今回は笑わなかった。
寝過ぎによる両肩脱臼野郎。
それが俺である。
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