リレーコラムについて

名店ガイド<東京三大グルメ>10

長井和子

最終日のきょうは“東京三大グルメ”をご紹介しましょう。
ひとつ目の場所は祖師谷大蔵。のっけから渋いでしょう?ここに私が、今、東京一!と信じているお寿司屋さんがあります。
「じゃあ、東京中の寿司を食べ歩いたのか」と言われれば、もちろんそんなことはないのですが。
でも、ここよりもっともっと高いお寿司屋さんでも、こんな感動は味わったことがないので…。ウンと高いお寿司屋さん(久兵衛みたいな)は、正直いうと行ったことはありません。ただ、「きょうはちょっとフンパツして、おいしいお寿司を食べよう!」と気合いを入れたとき、間違いなく1 万円台(ソコソコ飲んでも1万5千円以内)で満足できる、というお値打ち感を考えたら、“東京イチ”と断言していいと、私は思っています(お店を紹介するとき、“値段と満足感のバランス”は私にとって絶対に外せないポイントです)。
ついでにいうと、名店というのは、どれだけ感動体験ができるか、ということだと思っています。メニューに込められた料理人の心意気や、見事な職人芸、店員さんのちょっとした心配りに感動することもあれば、食器や、グラスや、インテリアのセンスに思わず見とれてしまうこともあります。そんな感動体験が忘れられなくて、ちょっとばかし遠くても、不便でも、つい、足を運んでしまう…、それが私にとっての”名店”です(その意味では、断然、東京よりは京都に”名店”が多いのはザンネンですが)。
前置きが長くなりましたが、祖師谷大蔵の北口を出たら改札前の商店街を渡り、直進する感じでしばらく行った左側に、目指す“団寿司”があります。マスターは中学生の頃からすでに朝新聞配達をしつつ親方について修行を積んでいたという、筋金入りのツワモノ。ここまでに至る話を聞いていると、やはり一種の天才だなーという気にさせられます。
私はここではじめて“マグロの血合いの薄造り”が牛のたたきをはるかにしのぐおいしさであったことを知り、“鱈”というのが本当はいかにおいしい、上品な魚であったのかを知りました。“小川のウニ”をはじめ、その日、その時々でおいしいウニが変わること、また、芽ネギとうずらの卵と酒盗の乗った色どりも美しい軍艦のおいしさに感動したときも、フタをあけたての酒盗の上ズミは、掬って捨てるというのもはじめて知りました。
沢庵のカツラむきの見事さも、エッジがピンピンにそり返って直立したような青柳も…。いろんなものをこの店ではじめて目にしました。あとは行ってみて下さい。目からウロコの体験がいっぱいできるはずです。
(TEL 03-3483-0087 )
次にご紹介するのはフランス料理。これに関しては、実は私はかなりの授業料を払っています。トゥールダルジャン、タイユバンロブション、マキシム、オテル・ド・ミクニ、オーベルジュ・ド・スズキ、オーシザーブル、オーミラドー、シェ・ピエール、レカミエ、プティ・ポワン、フィガロ…などなど。
でも私が東京一と断言できるのが、この恵比寿の“月夕堂”です。西口から駒沢通りを渡り、ウエンディーズの角を入ってまっすぐ行った左側。小さな目立たないお店で、シェフがひとりでやってます。洗い場からお運び、バーテンまで、すべてひとりでこなします。だから予約が大勢入ったときなど、寝袋持って3 日くらい、お店に泊まりこんでしまうのです。
ここのシェフも“8 才から包丁を持っていた”という、一種の天才で、まだやっと30歳という若さですが“団寿司”のマスターと(性格やタイプは全く違うのですが)相通ずるものがあります。彼は20代の前半だったか、事故にあって車椅子となり、一時は再起不能と思ってあきらめた時期もあったとか。
そのため“今は好きな仕事ができるだけで幸せ”と、ある意味、趣味の領域に入っちゃっていて、採算をほとんど考えてないんじゃ…と思うこともしばしば。
たとえば岩ガキをあけたときの海水を集め、煮つめてエキスをとり、それでジュレを作る…とか、自分のアイデアで創作料理を生み出すのが楽しくてしようがないらしい。
鶏の卵ではなく、鮭の卵(つまりイクラ)をつぶして、漉して造った茶わんむしというのも、ここではじめて食べました(イクラ好きの私としては、言葉につくせないほどおいしかったです)。
お姉さんが京都にいるので、生でたべられるほおずきなど、錦小路でも珍しいような素材も手に入る。
コーヒー豆を枝のてっぺんから日の当たる順にNO1 、NO2 …とナンバーをふるということも、ここではじめて知りました。もちろんNO1 の豆をつかっていて、ジャワに長く住んでる友達が、ここのコーヒーを飲んで、「日本に帰ってきて一番おいしいコーヒーを飲んだ」と、感激してました。
ここも、とにかく行って、食べて、シェフの話を聞くっきゃないです。メニューについて質問すると、いくらでも楽しそうに説明してくれます。(TEL 03-5458-1087 )
さて、3 軒目は日本橋になります。高島屋の“南インフォメーション口”を出ると目の前の駐車場が抜けられるので、そこを通り抜けるとすぐ左側に“米夢(マイム)”という看板が見えます。
健康とダイエットがコンセプトのこの店は、徹底的に素材にこだわっていて、それがまたメチャクチャおいしいです。まず看板料理(?)であるところの玄米。11 年間農薬無使用の紅カブトエビ米というのを使っています。カブトガニの小っちゃいのみたいな紅カブトエビが草を食べてくれ、しかも役目がすむとカルシウムとキチンキトサンとなって玄米の栄養になるというすぐれモノ。成分だけでなく味もよくなるというからスゴイ。確かにここの玄米はほかとはゼンゼン違います。
また、山形から仕入れるコンニャクは、蔵王の麓で鍾乳洞を通って湧く天然の石灰水で作られるため、全くコンニャク臭さがない。ここの刺身コンニャクを食べた日には、
「今まで刺身コンニャクだと思って食べさせられていたアレは何だったの…?」とだまされていたような気になります。
フレンチ出身の宮城シェフの作る絶品のコンソメゼリーや、30 種のスパイス入りベジカレーなど、ひと口食べると感嘆の声が上がります。また”シェフ秘伝のタレ”つきの無農薬ニラチヂミを、ここで食べてしまったら、それは、もう…。無農薬(季節によっては減農薬)のニラは薫り高くやわらかく、病みつきに。はっきり言って他の店のニラチヂミでは満足できないカラダになってしまいます。
また、女性のチーフバーテンダー市ノ川さんが作る無農薬フルーツのカクテルや果実酒をはじめ、玄米焼酎にオーガニックワインと、お酒も100 種類を越えます。オーガニックワインのプティ・ルビ・シラーは昨年のワインコンテストで金賞を受賞。ワインエキスパートの伴良美さんも絶賛したおいしさです。(TEL 03-3516-0138 )
オーナーはコピーライターの長井和子サン(つまりワタシ)なので、「長井さんを知ってる」というと10 %引きになります。
最後まで宣伝でゴメンナサイ。1 週間のおつきあいありがとうございました。
次回はいくつになっても(といっても、私よりひとまわり以上も若いですが)お肌の衰えを知らない原暁美サンにバトンタッチします。
彼女の美肌の秘訣は、棒石けん(知ってますか?四角くて長い洗濯石けん。そう、タライと洗濯板でゴシゴシやるための…切って使うアレです)で顔を洗うことだとか。勇気ある方は試してみてください。

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