歩道の隅で女が。
振り上げた拳は、やはり打ち下ろされました・・・
はじめまして。長井さんより
コラムを引き継いだ原 暁美と申します。
フリーのコピーライターです。
広告代理店、制作プロダクション、個人事務所を経て、
平成5年、乃木坂に事務所を開設しました。ってことは、
もうフリー歴9年目! 時の流れに鳥肌が立ちます。
さて、独立当初、希望に燃えながらも
私はうっすら寂しかった。いままで同僚やら
上司やらがいたのに、これからは一人。
なんだかねぇ。手触りというか、息づかいというか、
なんかこう、ふわふわした温もりが欲しくなったのね。
そいつは、打ち合わせの帰りにADと立ち寄った、
銀座松坂屋のペットショップにいたんです。毛むくじゃらで、
あったかそう。耳が長くて、尻尾が丸くて、なんて
キュートなの! 思わずJCBカードで手に入れた温もりは、
2万4千円也。ネザーランドドワーフ種の
とってもラブリーなウサギでした。
こうして、ウサギがカシャカシャ(爪の音)駆け回る事務所で、
フリー稼業をスタートさせた私。春になれば、
仕事の合間にウサギの好物の七草を摘みにいったものです。
と書くと、ちょっとほのぼの。でも、よ〜く見れば、
精も根も尽きたような女(コピー書きに煮詰まった女)が
コンビニ袋(収穫した草を入れます)片手に
歩道の隅でうずくまる、というちょっと怖い光景です。
ところで世間では、東京は冷たいとか、人情味がうすいとか、
言いがちですよね。もし、あなたもそうお思いなら、
いちど道端でうずくまってみてはいかがでしょう。
「おや、小鳥のえさですか」と声をかけてくれたのは、
白髪まじりの笑顔がナイスなおじさま。OL風の女性からは、
「あの〜、その草、食べられるんですか」と尋ねられました。
街の美化活動と思ってくれたのか、「ご苦労様です」と
労ってくれたご婦人、違うんです、でもありがとう。
「もしもし、ご気分でも悪いんですか」と
心配してくれた、ちょっといい男もいましたっけ。
みなさん、都会の道端には、食べられる草もあるし、
出会いもある。少しほっとしますね(なんのこっちゃ)。
それでは、また、あした。
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