オスマン最後のコラム
岩崎竹彦
これで5回目。最終回。スペインを中心にフランス、ポルトガル、モロッコなどをふらふらとしていた僕ですが、一昨年当時勤めていた大會社のボスに「ぜんぜん休んでないので休暇をください」「どのくらい休みたい?」「まぁ、半月くらいは」「それじゃ中途半端だろ。1ヶ月くらい行ってこい」というわけで突如、トルコ航空機に乗り、イスタンブールに飛びました。
東洋と西洋の出会う場所に行ってみたいという単純な理由なのですが、とりあえずスルタンアフメット地区のホテルにタクシーで向いました。ホテル近くの<ドイドイ>というレストランでトルコ料理を食って、ホテルのロビーでTVを見ていると、フロントにいる男性が何か白い液体を飲んでいる。「それ、うまい?」と身ぶり手ぶりで聞くと、新しいグラスにその謎の液体をいれてもってきてくれました。それは<ラク>というアニスのようなトルコの酒で、水で割ると白く濁る独特の酒。それが強いのなんの。強烈な酔いが長旅の後の疲れとともに全身をかけめぐり、ほとんど気絶するように眠り、トルコの初日が終わりました。
次の日、路面電車でエノミニュの港まで行き、ガラタ橋周辺をうろうろ。このあたりは各方面への船が発着するイスタンブールでいちばん賑やかな空間。あたりにはいろんな物売りが溢れていてうるさいくらい。電池売り、ティッシュ売り、わけのわからん部品売り、水道の蛇口売り、靴下売り、ゴマパン売り、などの人々が声をからしている。また、観光客を狙ってニセ警官や睡眠薬強盗なども出没して、なにやらえたいの知れない雰囲気がただよっている。
そんな猥雑でエネルギッシュな空間にまぎれていると不思議と自分が落ち着く感じがして、その後、毎日のようにドネルケバブを階段に座って食べなら、その港周辺を眺めてました。現地で知り合ったトルコ人は、観光地めぐりをしないで毎日同じところばかりにでかける僕を「何しにトルコに来たんだ!?」と不思議がっていたけど、どんな遺跡よりもコーランの流れるなか、その光景を眺めているのが面白かった。
こじつけかもしれないけど、ここに「広告」の原点というか、人が物を中心にして人と結びついている素晴らしく原初的な営みがあって、差別化とかコンセプトなんてことを軽くすっとばして炸裂する物を売るエネルギーが存在してました。
コピーライターで仕事に疲れた人や転職する人には、イスタンブールのガラタ橋周辺をおすすめします。元気になること、保証します。
あと、トルコ人は異国からの友人にトルコ名をつける習慣があり、僕はよくいっしょに飲んで遊んだ旅行会社のトルコ人に『オスマン』とネーミングされてしまいました。「それって、オスマントルコのオスマンだろ?もっとかっこいいのがいい」と抗議したけど「いや、お前はオスマンだ。いい名前だ。一度つけた名前は変えられない」ということで、僕のトルコ名は『オスマン』に決定しました。今後はそう呼んでください。(うそ)
ついにというか、やっとというか、今日が最後のコラム。とりとめないものになって申し訳ないです。感想、抗議は岩崎までメールで。
tiwazaki@d3.dion.ne.jp
来週からは梅田彰宏さんの登場です。梅田さんは僕が入社した最初の会社からの知り合い。ラジオCMを中心に活躍している先輩です。話題豊富なひとなので、きっと楽しいコラムが展開すると思います。
では、梅田さん、よろしく!
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