リレーコラムについて

和菓子屋の家族

鵜澤敏行

第2回

そんな東京の川の手の和菓子屋一家は、
高度経済成長に乗り、(従業員は父と母だけでしたが)
それはそれで景気は良かったんです。
とは言っても、2、3年に1度、
新年に旅行ができたくらいですが…。
で、あれは僕がやはり小学校の高学年くらいでしたか。
旅行に行くことになりました。
確か、箱根あたりの旅館でした。
そんな僕たちが行くような旅館ですから、
今で言えば、一泊1万円前後のクラスです。
父、母、兄、そして妹の5人。
どんな旅だったのかは全然覚えてませんが、
夕食の出来事は今でもはっきり思い出せます。
***
夕食は、大きな宴会場でテーブル席でした。
時間通りに行ってみると、意外と空いていて
私たちの他に、2、3家族が食事してるくらいでした。
すでに出されている料理を見渡して、
なんかうまそうだなーと思い、中央を見てみると
今までに見たことのない鍋があり、そうだなー
なんかあの頃受けたインパクトは、
タジマハールの屋根のようなような印象だったかな。
ピカピカした銅でできていて、
真ん中が天に向かってそびえていて…。
これは何だと思い、父と母の顔を見ると
やはり目を丸くして眺めていました。
その瞬間、川の手育ちで和菓子屋のせがれの直感が働き
「やばい」と思いました。

ちょっと長くなりそうなので、続きは明日。

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