リレーコラムについて

日本語

白石大介

ちょっと前になるが、仕事でロスに行った。比較的、長期であったので、休日なるものもあった。昼前に、一緒に行っていたプロデューサーと滞在していたホテルの近くのカフェへランチにでかけた。場所はウェスト・ハリウッド。きっと、俺たちはゲイに見られてるんだろうな、と言いながら、混雑しているカフェに入った。

ロスは日本語ブーム、いや、正確に言うと、日本文字ブームである。異国の文字というのは、デザインとして美しい、かっこいいと思うようだ。最近、韓国で、ハングル文字ってかっこいいよね、って韓国人に言ったら、いやだ、ダサイ、と言っていた。英語がかっこいいと。(きっと、僕にとってはとっても魅力的なソウルのハングル文字の看板たちも、10年後はほとんどが英語に変わっているに違いない。)ロスでは、漢字やひらがなが、かっこいいらしい。スタジオで向こうのスタッフに、Tシャツをぐっとまくられて、これってどういう意味だ、と、刺青を見せられた時には驚いた。意味も知らずに彫るなよ。そこには「大男」と書かれていた。彼は、小さかったが、たくましいカラダをしていたので、別に問題ない、と無責任に言っておいた。

話は戻るが、その(いわゆるスターバックスのようなつくりの)カフェに入ると、カウンターで注文をし、コーヒーを受け取り、外のオープンテラスの空いてる席に向かった。ちょうど、ガラスのドアを空けて、外に出ようとすると、きれいな女の人とすれ違った。少し小柄で細身のブロンド。6歳くらいの子供を連れた母親。彼女は、やはり、日本語の書かれたTシャツを着ていた。「Oh!Good Design!」僕は、彼女のTシャツを指さし、そう彼女に言ってみた。(僕は、アメリカに行くと、ろくにしゃべれないのに、あの雰囲気に呑まれ、すぐに話しかけたりしてしまう。)彼女は、一瞬キョトンとしていたが、僕が日本人であることと、自分の着ているシャツに日本語が書かれていることが頭の中で一致したらしく、ニコリとものすごく可愛く微笑んだ。それから、約10分後。コーヒーと絶対に食いきれないでっかいサンドイッチがのっかった僕らのテーブルの前に彼女がやってきた。彼女は、自分のTシャツを指さして、僕に「どういう意味だ?」と聞いてきた。僕はあせってしまった。そこに書かれていたコトバ、それは、「勝手がちがう」だったのだ。おいおい、日本語でも説明すんの難しいよ。っていうか、こんなコトバ、Tシャツにすんなよ。結局、しどろもどろになる僕を見かねて、彼女は、「悪い意味か?」と聞いてきたので、「いや、悪い意味じゃない。」と答えるのが精一杯であった。日本語って、難しい。ちなみに、そのTシャツの勝手がちがうのコトバと一緒にかかれていた絵は、はねている鯉だった。

白石大介の過去のコラム一覧

0556 2001.12.01 父へ
0555 2001.11.29 韓国語
0554 2001.11.27 日本語
0553 2001.11.27 観覧車
NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
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