韓国語
ちょっと前になるが、韓国に行った。韓国人は、日本人に顔が似ているし、基本的には、ものの考え方が日本人に似ている気がするから、好きだ。よく働くし、よく遊ぶところも、好きだ。韓国は、まだまだ日本やアメリカの文化の流入は少ない。昨日も書いたが、ホテルや交通機関は別として、街中では、ハングル文字が中心で、英語の表記は少なく、併記されていることも少ない。その時は、日本語べらべらの韓国人と一緒だったので、僕は比較的、不自由することがなかった。その夜がくるまでは・・・。
その夜、僕らは、ソウルの北側のはやりの店で、豚を食べた。ちょうど、日本のテレビ番組でたまたま見た店だった。ちょっとこぎれいな作りだが、油で、店中べとべとだった。韓国人は、油とニンニクは気にしない(たぶん)。サラダバーならぬ、サンチュバーがあった。見たことのない葉っぱがたくさんあった。韓国人は、野菜をほんとによく食べる。若い人で太った女性は本当に目にしない。(これもまた、アメリカナイズされてくると変わってしまうのか。涙・・。)その店を出ると、あるディスコに入った。僕らはダンスフロアーに面するテーブルに腰掛けた。うるさい。フロアーでは、30人くらいの男女が踊っていた。この暗さだと、日本人と区別つかないノリである。店は、かなり広かった。客全員がきちんと座れる広さだ。1杯目のお酒を飲んでいると、ひとりの男性店員が、客の女の子の手を引いてやってきて、僕の隣に座らせた。僕が、驚いていると、案内してくれた韓国人がそういう店なのだ、と説明してくれた。不思議なシステムである。というか、画期的なシステムだ。つまり、こういうことだ。各男性客のテーブルに専属の店員というのがつく。彼は、店の可愛い女の子をみつけ、そのテーブルに連れてくる。もちろん女の子はそういう店だと知って、踊りに来ているので、嫌がる子もいるが、結局は引っ張られてやってくる。女の子は、座るとそのテーブルのお酒やら食べ物やらは基本的に自由。気に入らないと思ったら、1分で席を立って、戻ってもかまわない。(戻る途中でまた引っ張られていく子もいるが)テーブルにつく店員は、そこに座る客が指名することができる。すると、店員には、チップが入る。もちろん可愛い子を上手に連れてこれる店員が指名されるから、店員も技術を磨く。一方、女性客は、お店に入るのに、お金(そんなに安くないと聞いたが)を出す以外は、男のテーブルに行っている限りお金はかからない。しかも、そういう店だとわかっていてきているので、さすがに、全然引っ張られないと、つまらないらしく、女の子の質は自然と上がっていくそうだ。よく、できている。
僕の隣に座った女の子は、英語が話せなかった。僕は、韓国語が話せない。アンニョンハセヨ。それっきり、沈黙である。すべて、セッティングされているのに、沈黙である。女の子は可愛いのに、沈黙である。ぼくは、コトバでコミュニケーションを考える仕事なのに、沈黙である。そう、ぼくは、コトバの大切さをあらためて痛感したのだ。その日から僕は、韓国語の勉強を始めた。一応断っておくが、動機は、その女の子がすごく可愛かったからではない。