指名手配
名古屋のファンが離れても
大阪のファンが認めてくれなくても
最後に星野ファンが残るヨ。
今朝のスポーツ新聞で、いちばん印象に残ったの
が、このフレーズ。星野仙一の、阪神監督決断の
決め手になったのは、知人の中国の方から贈られ
たこの言葉だったそうです。人の人生を左右する
ひと言。思えば、求人広告のコピーって、みんな
そうなんだな、と改めて責任感を漲らせてくれた
言葉でした。
さて、昨日のつづき。
警視庁からお話をいただいて、こんなおもろい仕
事、私1人じゃもったいないからみんなにも分け
てあげようということになって。で、何人かに声
をかけてオリエンして、企画案を出してもらうこ
とにしたんです。
そしたらくるわくるわ、みんなメジャー仕事に飢
えてたんですね。捜査協力ポスターのほうは、20
案ほど集まりました。しかし、指名手配ポスター
のほうは、やりようがないのか、たったの2案。
そりゃそうですよね。指名手配っていったら、写
真があって、名前があって、罪状が書いてあって
「この顔にピンときたら110番」っていうパタ
ーン。企画なんて必要なの?って誰もが思う。
でも、いいのがあったんですよ、指名手配のその
2案のうちの1つ。私は目から鱗がおちました。
一応、写真があって、名前があって、っていうパ
ターンなんですけど、キャッチコピーがでっかく
逮捕されるな。自首しろ。
でした。いやぁ、参りました。この企画案を考え
たのは、今はI&Sにいる河野雅樹というコピー
ライター。後に、彼は、私より早くTCC会員に
なりました。さすがです。
この案の企画書には、こんなようなことが書かれ
てありました。「指名手配のポスターを、一般の
人たちがじっくり見るようなことはしない。そこ
に載っている人の家族か関係ある人じゃないかと
思われてしまうから。では、誰がいちばん、見る
か。それは、そこに載っている本人、犯人がいち
ばん見る」
結局、このコピーは、「警察が、逮捕されるな、
などと言うことはできない」という、そりゃごも
っともですという理由で、世に出ることはなかっ
たのですが、もし世に出ていたら、
逮捕されるな。自首しろ。
は、ある意味、人の人生を左右する、決断を促す
ひと言になったんだろうなと思います。警視庁刑
事部の担当の方も言ってました。「このコピーを
表に出すわけにはいかないけど、指名手配の仕事
をする私が、逃げている犯人にいちばん言いたい
のは、この言葉だ」と。
その年の警視庁初仕事、指名手配ポスターは、犯
人たちの名前をひらがなにして、視力検査表みた
いにした私の案が採用されました。河野の企画書
の「指名手配のポスターを、一般の人たちがじっ
くり見るようなことはしない」をヒントに、だっ
たら指名手配ポスターじゃなくしてしまえ、とつ
くったのです。
コピーはヘボでしたが、ポスターに載った5名の
うち、3名の人生を左右することができました。
おまけに、このポスターと他4点で、TCC新人
賞に初応募。ノミネートまで行ったんで、こりゃ
イケるかも、と自分自身の人生もちょっぴり左右
されました。
では、また。