かっこええオッサンPART.1
奥田英輝
●20代のころから憧れていたことがあった。36歳になるということ。深い理由はなかったのだが、なぜかその年齢に憧れていた。オニイチャンとも呼べず、中年と言うのには早すぎる中途半端な年齢に、なぜか憧れていた。飲み屋なんかで歳を聞かれると、2〜3年前くらいから「サンジュウロク」と答えていたほどである。そんな自分が今、まさに36歳。昨年11月23日、妻から「人生あと半分。悔いの無いように」などと書かれたメッセージを誕生日に頂戴した日からスタートした。それから2ヶ月経ったが、その間「あー、良かった」と思ったり感じたりしたことなど一度も無い。それどころか、妻が吐いた「人生あと半分」というコトバが事あるごとに頭をよぎりやがる。パッとしない日々を過ごしていたところ、先週末、一人の人間が自分を元気にしてくれた。ただしその人は、僕がどんな気持ちでいたのかなんて、全く知らなかったということを付け加えておきます。
●その人は現在46歳のコピーライターNさん。ここ数年アタマに白いものが増えたものの、引き締まったカラダ、体力なんかはおそらくそこらの20代には引けを取らないはず。たとえば先日20代の男女10人程引き連れて飲みに言ったらしいのです。居酒屋で飲みまくり、バーで飲みまくり、散々熱く語り、その後カラオケボックスへ。ま、ここまではよくある話。歌いまくって午前三時をまわったころ「よっしゃ、そろそろ次の店行こか!」とマイクで声高らかに叫び、勘定をすませ店を出ると、なんと隣のカラオケボックスへ。「ここはさっきの店より曲は少ないけど、音が抜群にええんや!」。誰も聞いてないのに、またまたそんな熱弁をふるいながら自動ドアを入っていき、その店を後にしたのは、冬の空に陽が上ってたと誰かが言ってたので、たぶん早朝7時ごろだったのでしょう。Nさん以外はフラフラになりながら家路につこうとしていたところ、Nさんが「よっしゃ、つぎ吉野家行く人?」と言ったとか。「もうアカン」「もうだめです」そう言いながら全員退散しようとした時、Nさんの隣にいたO君が無理やり連れて行かれ、「食われへんかったら、すぐ終わるから待っといてくれ」と言われ、横の席で牛丼を食されるのを見学していたそうです。その日の事を聞いた日、すぐNさんに会ったので「またえらい飲み方しはったらしいですね?」と僕が言うと、「ん?、いつもの飲みコースやがな」という返答。10歳年上とは思えない体力に感心するとともに、この先何があっても「Nさんとは飲みに行ってはならない」ということをあらためて心に誓いました。
●ただこれだけだと、「こんな人まだまだおるで」となるでしょう。Nさんには体力の他に、誰にも負けないと豪語する精力があるのです。まだ結婚して数年で、4歳を頭に、2歳と1歳と、3人のパパでもあるのです。「すごいですね。マネできませんわ」と言うと「僕もそろそろ考えんと、ちょうど人生折り返し地点に差し掛かったからなあ」とサラッと返された。そう、このオッサンは90歳まで生きる予定でいるのです。それも今と変わらず元気なままで。そして最後に「あのな、人間は気合や。気合!気合でどうにでもなるもんやで!」とエールをくれた。
●人間ある程度、度を越せばかっこよく見えると気づいた。僕はましたこれから、気合の入った46歳を目指そうと決めました。あと10年ある。早速スポーツクラブ通いを決めた僕は単純なのでしょうか。さ、続けるぞ!
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