ぶどうご飯
安田有美香
30歳そこそこで分譲マンションを買った夫婦がいる。
なんとローンも数年で返してしまった。
職業は、フリーのライター。
その後さらに、3階建ての「自社ビル」をおっ建てて、古本屋を開業。
奥さんが取締役社長。ダンナは依然フリーライター。
しっかりものの嫁と、温和なダンナという組み合わせ。
よっぽど稼いでるのか?と思いきや、
その節約ぶりがスゴイらしいと評判になった。
なぜか?
ダンナが持ってきた愛妻弁当。おかずが、「ぶどう」だったのである。
正確には、ごはんの中に、まるでグリーンピースのごとく生のぶどうが点々と埋め込まれていたらしい。ごはんと、ぶどう。以上。
その事件を発端に、彼らの節約生活についてのウワサが派手に広まった。
「まぁ、本人どうし(特にダンナ)がそれでいんだから、ほっとけよ」なんて話だが、これがまたおもしろいのだ。
●ダンナのパンツ(下着)は破れるまではく。お尻の真中が裂けたら、嫁が
チクチク縫って、さらにはく。夫婦が留守の時、なにかの用事でダンナのお母さんが家を訪れた。そこには、ツギハギだらけの息子のパンツが。…いたたまれなくなったお母さん、新品のトランクスを買ってきて、そっと置いて帰ったらしい。
●ダンナは花粉症。「春の朝は、寝起きに一発、ハナをかむ」という習慣が
あったらしい。それに備えて、箱ティッシュを枕もとに常備していたが、ある日「使い捨てはもったい」と妻が用意したのは、古タオル。タオルで鼻水って…。当然、洗って繰り返し使用。
●ある人が、夫婦の家を訪問。ちょうど夕方だったので、「うちでご飯食べ
ていけば?」と嫁。「すいません。じゃあ、お言葉に甘えて…」と言いかけた客、次の瞬間絶句。食卓には、ご飯と刺身のみ。…しかも刺身はスーパーのパックのままだったらしい。
●結婚して数ヵ月。なんだか体調が優れない…と病院で診察を受けたダンナ
。結果は、なんと「栄養失調」だった。
とまぁ、文字にすると強烈な嫁と従順な夫…という図になっちゃうけど、2人はいたって仲がいい。
去年の末に、彼らと飲む機会があった。
ちょうどいい機会だと、ウワサの真相を確かめてみた。
…結果、ぜんぶ真実。
「おかずがブロッコリーだけってのもあった」というダンナの赤裸々な告白には、一同涙(笑いすぎで)。
現在、ダンナは某大手企業に就職してサラリーマンに。
「よくフリーからサラリーマン生活に戻れるねぇ」と感心したら、「フリーの時代より、ずっとラクになった。夜は寝れるから」と言っていた(また涙)。
「まぁ、節約術もスゴかったけど、その分働いていたのね」と納得。
もちろん、通勤は電車でもバスでもなく、自転車らしい。
きっと愛妻弁当を持参していると思うのだが、そのおかずがとっても気になる今日このごろである。
(Mさん夫婦、勝手に話書いてごめんね〜。また飲みましょう!)
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