新規開拓
「ハルマヘラ島に肉食のオームはいるか?」というのが、最初の師匠である柏木新さんのいきなりのご下問でした。ヒヨッ子の私は、この一言に強烈にスリコミされてしまったのです。以来、珍なるもの、奇なるもの、唐突なるものに関心を深めていきます。イギリスの種苗会社のカタログに、walking stick cabbageなるものを見つけたときにも直ちに胸ときめきました。タネを取り寄せて栽培すること6ヶ月を過ぎ、それは2メートルほどの高さに育ちました。棒の上にキャベツが乗っかっているヘンな状態です。この棒を一年ほど乾燥させ、磨くといい杖になるのです。地中海のチャネル諸島の名物だといいます。別にまだ杖はいらないのですが、なんだか老後の楽しみを先取りしたかのような満足感があります。それに、ずいぶんご無沙汰している不肖の弟子ですが、こんど柏木さんにお会いしたら、「チャネル諸島のステッキ・キャベツって知っていますか?」と聞ける余得があるような気がします。