リレーコラムについて

ワールドカップ

田村功

先月の18日と19日の2日間、東京の恵比寿カーデンプレイス
で地ビールの祭典「シャパン・ビア・フェスティバル」が行わ
れた。僕は、これの大会会長に祀り上げられて開会挨拶やらマ
スコミ、来賓の対応におわれ、くたくたになってしまって翌日
から2日ほど寝込んだ始末。年は取りたくないもんです。
このフェスティバルは、今年で5回目を数える。ここのところ
地ビールの人気が停滞ぎみで、イマイチ盛り上がりに欠けてい
る。ひとつフェスティバルでカツを入れようと、主催側はない
知恵を絞って、あれこれとアイディアを考えた。
こういうとき、僕のようなコピーライターはあまり頼りになら
ない。だって金のかかるアイディアしか思い浮かばないもの。
「タムラさん、それ面白いけど予算ないヨ」と言われてばかり。
「もう少し、草の根的っていうか、手作り的っていうか、地味
でもビール好きが行ってみたいと思うアイディアを考えてヨ」。
そんな風に言われると「コンチクショウ、プロに向かって何を
言うか」と、こちらも受けて立たざるをえない。
そこでハッと思い浮かんだのが、ワールドカップ。ワールドカ
ップの出場国32カ国のビールを全部集めちゃおうと提案した。
みんなが「それ、イケル!」と言ってくれたが、不安がないわ
けではない。32カ国が全部ビールを造っているかどうか。
みんなで手分けして、片っ端から大使館に電話をかけて聞いた。
なんと全部の国が造っていた。「すごい!」。スタッフが喊声
をあげた。
さて問題は、どうやって集めるかである。アメリカとか、フラ
ンスとか、イギリスのビールは輸入されているから問題ない。
これまで日本に入っていない国のビールを手に入れるには、ど
うしたらいいか。まず輸入商社に当たってみることにした。ビ
ールは入れていなくとも、ワインとかリキュールとかを輸入し
ていたら、今回だけ特別にビールを取り寄せてくれるのではな
いか。それでダメな国は、再び大使館に電話をかけて大使館経
由で買うことにした。これで大方目鼻がついた。
しかし、どうやっても日本から買えない国が4カ国残った。
「アメリカにはあるはずだ。4カ国ともワールド・ビア・カッ
プに出場している。審査の残りのビールを貰ってこよう」
フェスティバルを主催している日本地ビール協会の会長が言っ
た。その会長と僕は、ワールド・ビア・カップの審査員として
アメリカに呼ばれている。残りのビールを貰うのはわけない。
1カ国2ケースずつ、4カ国だから8ケースだ。帰りの飛行機
に手荷物で持ち込みさえすれば、あとはなにもしなくて日本に
着く(ワールド・ビア・カップのことは、月曜日に書いたから
詳しい説明を省く)。
そうタカをくくっていたのだが、やってみて後悔した。
空港の荷物チェックで、引っ掛かった。向こうは、火炎瓶か何
かと疑ったらしい。8ケース全部開けられて、1本1本光りに
かざして調べられた。その調べ方がまた、のろのろしていて、
いつまでも終わらない。出発時刻の2時間前に空港に入ったの
に、これじゃチェックインもできず飛行機に乗り遅れちゃう。
後ろを見たら、僕たちの荷物検査が済むのを待っている客が延
々と続いている。僕はイライラして、「なにも全部調べなくて
もいいだろう!?」といったら、女の係員はニッコリと笑って、
「全部調べるのが、わたしの仕事!」と言いやがった。
それでも、どうにかこうにか飛行機に乗ることができたが、あ
んなに焦ったことはなかった。
でも、そうやって苦労した甲斐があった。ワールドカップ32カ
国のビールは、今年のビア・フェスティバル一番の人気を集め
た。2日間の入場者約2500人。全員には行き渡らなかったが、
多くのビール愛好者が珍しい国のビールに舌鼓を打って楽しん
でくれた。
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おだて上手の川崎仁志さん(パワートレイン)に乗せられて、
どうにか5回のノルマをクリアできました。ご愛読感謝します。
「じんチャン(僕は川崎さんをこう呼んでいます)、これで約
束を果たしたョ」。
さて次週は、僕がNDC時代に仲間だった市野川豊昭さん(イ
ム・アソシエイツ)にバトンを受けてもらいます。
ご期待ください。

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