リレーコラムについて

ウインドサーフィンにはまりそう

市野川豊昭

久しぶりにNDCの大先輩、田村功さんから電話をいただいた。
「ハイわかりました、やらせていただきます」
というわけで、今週は僕が担当することになりました。
お付き合いください。

田村先輩が鎌倉の住人であることとはまったく無関係に、僕は鎌倉の材木座に行くことが多くなった。
それは2年前の5月だった。親友に誘われるまま、横横道路を突っ走って、材木座の海岸に面したお世辞にも綺麗とは言えないロッジに着いた。僕は、海の支度など何もしてきていない。海パンも当然持ってきていない。海に入る気などさらさらなかった。ただ日がなのんびり海を見ていたかっただけなのである。
そこのオーナーや仲間に紹介されて、よくある初対面の人と交わすような会話をしているうちに「せっかく来たんだから、あなたもトライしてみない。今日はビギナー向きの風だよ」とオーナーが軽く誘いをかけてきた。それは、オーナーとしての社交辞令みたいなものだったかもしれないが、「やってみるんだったら、僕のウエットスーツ貸すから」「ボードとセール、セットアップしてやるから」「海まで運んでやるからさ」と、仲間が次々と誘いの声をかけてくれる。で、とうとう浜に出る羽目になってしまった。
オーナーから基本的なことを陸レッスンしていただいて、ままよとばかりに海に出た。さわやかな微風が吹いている。気持ちよさそうに風に乗っている若者がいる。50面さげて、とほほである。でも、ままよでもある。案の定、セイルを揚げることさえままならず、沈する(ボードから落ちることを、こう言う)ばかり。しかし、そのうち、どうしたことか、セールが揚がリ出したではないか。「ほら、ニュートラルの位置にセールを向けて」「そう、そう、そうだ」「ゆっくりブーム(マストとセイルをつなぎ、風に乗るための操縦桿)をつかんで」なんてことを何度も言われているうちに、ボードはスーと走り出した。周りから拍手が起こった。仲間だけでなく、知らない若者たちからも拍手が起こった。これは大げさに言っているのではない。陸で休んでいるウインドサーファーたちが、拍手と笑顔を送ってくれていたらしい。ブームを握るのに必死な僕には聞こえてこなかった。あとで、仲間が教えてくれたことである。僕は、はじめてのこの日10m位乗れたと思う。

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