コピーは体力と根性だ。その2
一年の浪人生活の後、晴れて大学生になった私ですが、合格の喜びもつかの間、入学式前には野球部の合宿所に入り4年間の合宿生活をスタートすることになりました。新人ですから知っている人はほとんどいません。大勢の上級生に囲まれて異常な緊張感の中で大学生活はスタートしました。朝は6時に起きてグランド整備に行くのですが、同室の上級生を起こさぬよう目覚まし時計は鳴った瞬間に止め、ふとんをそーっと片付けて部屋を出るのです。練習開始前に1時間半かけてグランドをならし、午前中は1,2年生が中心に練習。午後からは上級生とレギュラーの練習が行われます。夜は夜間練習場でバッティング練習。高校時代はサッカー部やラグビー部、陸上部などともグランドを共有していたため、バッティング練習は週に1回だったのが、ここでは毎日出来る。それだけでも嬉しかったのになんと好きな時に水まで飲める。周りの強豪私立高校からきた1年生はそんなことで喜ぶ私を不思議がっていましたが、都立弱小高校で「根性」を中心に鍛えてきた私にとって大学の合理性を追求した練習は大変新しく感じました。
私にとって最初の問題は大学のレベルでやっていけるのかどうかということでした。自信はあったけれども実績はない。同期の中には甲子園で活躍した選手もいるのです。根性と体力作りを中心に高校時代を過ごしてきただけに、基礎体力では絶対負けないということは入部してすぐにわかったのですが、同時に技術的な差もはっきりしてしまいました。このままじゃ追いつかない。そうわかってからは仲間とは違う工夫をしようと考え始めたのです。今ではスポーツ指導の世界では当たり前ですが、ビデオを徹底的に取り入れるようにしたのです。当時プロ野球ニュースでやっていた「今日のホームラン」というコーナーを毎晩録画し、コマ送りでプロのバッティングフォームを研究。同時に自分のフォームもビデオで撮り、プロの選手に共通している点で自分に足りないことを見つけ出していきました。練習ではそれを意識しながら課題を一つずつ克服していく。そうした生活を続けていくうちに次第にバッティングが開花し始めたのです。
今振り返ると、この経験がとても大きな自信を与えてくれました。根性と体力は高校時代に嫌というほど身につけた。大学時代は根性だけではできない物事の上達方法を知ることができた。そして私はいよいよ社会の扉を叩くことになったのです。(ちょっと大袈裟。次回につづく)
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