筋肉痛のコピーライター(再)
(僕の操作ミスにより、前の文章が削除されたので、再登録します)
はじめまして。きょうから1週間、当コラムを担当する、松下武史です。
制作会社で10年、フリーになって5年目。そうか、もう15年もこの仕事やってるんだ。
きのうまでの土日は、草野球チームの合宿でした。まるまる2日間、走ったり、打ったり、守ったり。自分の年齢も考えずに、若いメンバーと同じメニューをこなしたもんだから、全身がキリキリと筋肉痛。きょう1日、まるで油ぎれのロボットのような挙動で仕事をしてました。
午後6時。某社の応接室にて。「よいしょ」とオヤジ臭い声を出しながら、痛む太股をかばいつつ、低いソファに腰をおろしました。この冬に掲載する新聞広告のカンプに対する意見や要望を、担当者から聞くためです。おおむねの了解、まずまずの好感を得られて、よしよし。
そこに、そこにです。「あ、遅れました」と悪びれもせず、某代理店の営業が入ってきました。僕はこの人とは初対面。というのも、そもそもこの仕事は、新聞社の知人から「広告を出す会社があるんだけれど、いいクリエイティブをさがしているらしくて」ということでスタートしていました。だから、媒体を扱う代理店の人とは、これまで会う機会がなかったのです。
そして、机の上のカンプを目にするやいなや、彼曰く。「これでいくんですか。どうかなー、いいのかなー。こちらの会社のお好みでいえば、んー、上層部がどうおっしゃるか。せめて、もう1案、仕上げたほうが…」。
このカンプに至るまで、コンセプトのメモ、ビジュアルのスケッチなどのやりとりをして、方向づけが決まってたはずなのに。
「この段階で、捨て案をわざとつくれということですか」と僕。「まぁ、そういうことになるかもしれませんが」と代理店氏。「つくる以上は、ちゃんとしたものにしたいです」。「ま、それがクリエイティブの立場ですもんね」。「最初から考えたいので、1週間いただけますか」。「そんなにかかりますか。こちら、お急ぎなんですよね」と、ここで代理店氏は担当者を一瞥。担当者は返答に困っています。
そこへ畳みかけるように、「松下さんのほうで別案が無理なら、うちが使ってるところで、チャッチャッチャと…」という発言が出たときには、久しぶりにキレました。「そういうことでしたら、私は、このカンプを持って、引き下がらせていただきます」。こんなこといったのは、フリーになってからの5年間で3度だけです。
「えっ?え、ええっ?」代理店氏は驚いた様子で、「私の発言、失礼でしたでしょうか」。「確かに、失礼です」。そういったのは、これまで沈黙していた担当者でした。
午後8時。「私がどうするか、その結論はあすまでお待ちいただけますか」と啖呵をきっての帰り道。協力してくれたデザイナーに、カメラマンに、何て説明しようか。そればっかりが頭をよぎってました。
午後10時。きょうの経緯を耳にした、新聞社の知人からの電話。「締切ならこっちで何とかできますから、1週間かかろうと、納得のいくカタチでやってください。担当者とも、代理店とも、それで話がつきました」。
午後11時。筋肉痛は、もしかしたら、僕の脳味噌まで硬直させていたかもしれません。自宅(徒歩30秒)に戻って、ぬるい風呂で心身をときほぐし、再び事務所に。いまから、新しいプランを練ることにします。では。
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