ロマンポルノとジャンアレジ

僕の妻は、一度眠ると起きません。
ノンレム睡眠に入った姿は死んでるみたいです。
一度、夜中に合鍵を忘れて帰宅し、インターホンを鳴らし、
電話を鳴らし、魂焦がしてドアをノックするも、起きず。
最後は車のトランクから3番アイアンを取り出して、
寝室のドアをガンガンなぐるも、起きず。実家で寝ました。

ある土曜日。
編集を終えて深夜に家に戻った僕は、水割りを飲みつつ
ケーブルテレビのチャンネルをザッピングしていました。
邦画専門チャンネルで、リモコンの手が止まりました。
にっかつロマンポルノ特集。
これがけっこう、エッチで面白い。
見入ってしまいました。テレビのボリューム絞って。
やっぱり妻には遠慮があるので。起きないけどね。
不倫してる女の人がベッドで服を脱ぎ始めました。
・・・・。
あ、なんか冷たい。・・・水割りのグラスの氷が溶けてら。
床が水びたしじゃん。拭いとこ。
テーブルにあるエリエールの箱を手に取ったその時、
ドアが開きました。
「おかえりー。いやー、おつかれ、おつかれ」
妻が立っていました。
テレビの中の女性は完全に服を脱ぎ終えていました。
相手の男も。おめーは脱がなくていいんだよ。
エリエールの箱を手にしたまま、もう一方の手で
リモコンをゲットした僕は、とにかくチャンネルボタンを
押しました。あたふた。
「なに見てんのー？」
テレビはサーキットを走るＦ１の車載カメラの映像に
切り替わっていました。多分予選の中継です。
「Ｆ１」
「ふーん」
「やっぱ速いなー、アレジは」
「あーそー。まだ寝ないの？」
「いや、もう寝る。・・・なんで起きたの？」
「うーん、なんとなく」
女のカンは存在します。
さて、
僕は妻との会話の中でひとつミスを犯しました。
Ｆ１好きのあなたなら、もうお分かりですね。
ジャン・アレジは去年Ｆ１を引退してるのだっ。
油断禁物。アリバイは完璧に。
ではまたあした。