リレーコラムについて

ゴミ清掃車に轢かれた話。

岩田純平

こんにちは。
養命酒という会社で養命酒の新聞広告を作っている岩田純平と申します。
養命酒では養命酒しか造ってないの?
とよく聞かれますが、基本的にその通りです。
でも、みりんと焼酎と水も出しています。
これは養命酒のベースがみりんで、
みりんのベースが焼酎で、
焼酎のベースが水だからで、
こう書いてしまうと、
養命酒を造る過程でできているものもついでに売っとこう、
くらいに思われてしまいがちですが、
みりんも焼酎も水も本当にいい商品です。
言ってみれば飲めるみりんなわけですから、
その良さもお分かりいただけるのではないかと思います。
店にはめったに置いてないですから、
見つけたら即買われることをおすすめします。

めったにないことと言えば、僕は救急車に3回乗ったことがあります。

1度目は三つくらいの時、りんごのかけらを気管に詰まらせて、
2度目は高校の時、部活(軟式テニス)の試合中に骨折して、
3度目は大学四年の時、アルバイトに行く途中ゴミ収集車にはねられて、です。

その日僕は9時からアルバイトに入っていました。
近所のマクドナルドです。
でもその日は寝坊してしまって起きたのが8時半でした。
いつもならもう家を出ている時間です。
僕は慌てて着替えて、雨の中傘をさしつつ自転車で店へと向かいました。

この日僕は遅刻することができませんでした。
というのも、新人の女の子のタハラユリちゃんと二人きりの休憩を引いていたからです。
それはお昼のピークの12時からだったので、
遅刻などしようものなら人手が足りないなどと言われ、
休憩をずらされてしまう可能性が高くなってしまうのです。

僕は雨の中、ブレーキに手もかけず、自転車をせっせとこぎまくりました。
すると、天も我に味方してくれたのか、信号も全て青、
僕はかつて経験したことのないスピードで、
これは区間記録を大幅に更新です、
などと独り言をぶつぶつ言いながら、店へと順調にひた走っておりました。
ところが、ゴミ焼却場の入口の横断歩道を渡ろうとした時でした。
強引にゴミの車が左折してきたのです。
僕は必死にブレーキをかけましたが、片手でもあったし、
スピードは出し過ぎていたし、雨の横断歩道は滑るしで、
ゴミの車にぶつかってしまいました。
傘がふわりと宙を舞い、自転車がミシミシと車につぶされる音がしました。
僕は僕で地面の上をコロコロと3回ほど転がり、
左のひじをしこたま打ちました。
車から人が出てきて、大丈夫ですか、と聞いたので、僕は正直に、
「ダメです」 と力強く答えました。
その人は救急車と警察を呼んでくれ、僕は病院へと運ばれたのでした。

ケガは幸いにも軽く、打撲だけですみました。
1週間ほどでバイトも再開できました。
しかし、その時にはもう、タハラユリちゃんの姿はありませんでした。
彼女は僕が休んでいる間にさっさと店をやめてしまっていたのです。

僕はかわいいと評判だったタハラユリちゃんを1度しか見たことがありません。
それは僕の四年間のマクドナルド生活で唯一の心残りとなりました。

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