リレーコラムについて

平壌で そしてカンダハルで

一倉宏

 きのうに続いて軽い与太話を書くつもりでいたが
 ニュースを観て そんな心境ではなくなった。
 

 あしたからいろんな反発の声が渦を巻くだろう。
 けれども 怒りを組織してはいけない と私は思う。

 去年の9・11以来 読み返してみた本がある。

 「天皇の逝く国で」 

 ノーマ・フィールド 大島かおり訳 みすず書房
 戦争と政治について語りながら 熱くも冷たくもなく 血が通う。
 ほんものの知性ってこういうものなのか と救われる思いがする。

 「アンネ・フランクはなぜ殺されたか」

 バーバラ・ロガスキー 藤本和子訳 岩波書店
 冒頭から「あなたに怖い夢を見てもらいたくて、わたしはこの本を
 書いたのではない」と書き出されたハードな本だ。けれどやっぱり
 このような本が書かれることに 人間の希望が灯されると感じる。

 そして
 イランの映画監督マフマルバフのレポート
 「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない
  恥辱のために崩れ落ちたのだ」
 これは 去年の秋に単行本としても緊急発刊された。

 ニューヨークの悲劇は朝までニュースを観たが 
 アフガンの100万人の餓死者のことには 無知だった。

 バーミヤンの仏像に崩れ落ちるほどの恥辱を与えた
 世界の無知の 私もそのひとりだった。

 「傲慢」に気をつけよう。
 人間だって「傲慢」な奴より「自虐的」な奴のほうが
 よっぽどマシだ と私は思う。

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