コピーは書くな、読め。
中道康彰
みなさんの周りには、ボディコピーをいちいち添削してくれるような、
ボランティア精神あふれる人が何人いますか。
もし何人かいたとして、その中から、
ほとんど迷惑行為に等しい添削をする人を除くとどうなりますか?
限りなくゼロに近いですよね。きっと。
コピーって、結局は誰にも教えてもらえない。
僕の場合は、だいたいこんな感じでした。
「○○さん、ちょっとこのコピー見てもらえませんか」
「なんや。見せてみ」
「・・・・」
「・・・・」
1分くらいの沈黙。
コピーを読んでいるというより、眺めているかんじの先輩。
そして、パッと目をあげ、ひと言。
「フッ、しょうもなぁ」
「あきませんか・・・」
「アカンな。ぜんっぜん、アカン」
そこで先輩の机の電話が鳴る。
ぼうっと立ったまま待っている僕。
先輩の電話は長い。
ゲラゲラ笑う先輩。
なんとなくニヤけた顔をつくる僕。
そして、やおら先輩は受話器を片手でふさぐと、
もう一方の手で僕にシッ、シッをして、一貫の終わり。
でもまぁ、こんなのはどこにでもある話だと思うんです。
懲りずに何度もそんなことを繰り返していました。
が、あるとき、予想外の展開になったのです。
僕がいつもどおり、シッ、シッをされていると、
その一部始終を見るともなく見ていた別の先輩が、
席に戻った僕に近づいてきたのです。
その先輩というのは、社内でとっても評価の低い人。
駆け出しの僕が見ても、
その低品質ぶりには、お客さんが気の毒になるほどでした。
そんな先輩が、僕に声をかけるのです。
「おえ、ちょっとええかぁ。あっちいこや」
「はいっ」(うわあっ、きたできたでぇ)
「さっきのコピー、ちょっと持っといで」
「あ、わかりました」(何やねん、まさかオレのコピーを添削すんの?ウソやろ?)
「見せてみ」
「えっ?見るだけですか」
「アホ言え、チェックしたるんやんけ」
感熱紙にプリントされた僕のコピーを、もぎ取る先輩。
「うーん、確かにアカンな」
「そうですかねぇ」(むっかつくのう!おまえだけには言われたないわい)
「お前はなぁ。コピーを書こうとしてるやろ」
「えっ、書いたらアカンのですか?」(キャッチだけで勝負せぇってか?お前が言うか、それを!)
「おう。アカンでぇ。コピーは書いたらアカン」
「ほんならどないするんですか」
「お前はなぁ、書いたろかいう気持ちが前に出すぎとるんや。見てみいや、この文体」
「・・・・・・・・」
「なんや誰かのマネしよう思うんかしらんけど、作ったような文章やがな」
「・・・・・・・・」
「ええかぁ、大事なこと言うでぇ」
「・・・・・・・・」
「コピーは書くんちゃう。読むんや」
「・・・・・・・・」
「頭の中で読みながら手が勝手に書いとおる。これが大事や」
「・・・・・・・・」
おそらく彼は、そういうことをどこかで読んだか聞いたのでしょう。
なぜなら、彼の広告のボディコピーほどヘタクソなものを、僕は見たことがないからです。
結局彼は、会社を去るまでの間、頼みもしないのに、
何度も何度も僕のコピーを添削しました。
それは明らかに迷惑行為であったのですが、
ただし、あのとき彼が言った「コピーは書くな、読め」というメッセージは、
いつまでも僕の心の中に残りました。
このイメージ?を、僕はけっこう気に入っているのですが、
実践で使えた試しがありません。
難しいし、物理的に不可能なのかもしれませんが・・・。
もしよろしければ、どなたか僕のかわりに
やってみてもらえませんか?
ひょっとすると、別世界に足を踏み入れることができるかも・・・です。
今日は東京出張です。
寒いですね、東京は。
では、また明日。
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