傷だらけの半生
山内登
小さい頃からケガばかりしていた。
5歳の時、ふたり乗り自転車で走行中、
後ろに座っていて、
足のかかと部分を車輪に巻き込んだ。10数針。
9歳、ぶざまな転倒で、下顎裂傷、たぶん5針くらい。
13歳、有刺鉄線を乗り越えようとして失敗。
太もも裂傷、7,8針。
以後、今日まで縫われた数は全身で50針を下るまい。
切り傷、突き指、ねんざ、肉離れなどはケガには入らない。
僕の場合、とにかく骨折と裂傷が多い。
それも、不思議と4,5年周期でやってくる。
不可抗力もあるけど、自分の不注意もあるから、始末がわるい。
たぶんリスクが多いライフスタイルなのだと思う。
圧巻は、だいぶ前のことだけど、顔面の大ケガだ。
トライアスロンのバイクパート練習中、乗用車と接触した。
ちょっとした転倒だったのに、ボンネットにのりあげて、
そのまま頭から落ちた。
当たり所がわるく、バンパーに顔面を激突させてしまった。
上唇から鼻にかけてパクリと裂け、
前歯上4本が吹っ飛び、上顎も骨折。
額も切ったが、脳に異常はなかった。
ひとことで言えば、口元がグシャッと損傷した状態。
夥しい血とは、こういうことを言うんだろうなというくらい
血が流れました。
自分ではわからないけど、
フランケンシュタインどころではない。
たぶん人間の顔をしていなかったんじゃないかな。
翌日駆けつけてくれた上司が
「あれはヤマウチではない。
もうだめかも」
と言ったらしい。
その後、口元の裂傷は、形成外科で再手術。
きれいに修復してくれた。
歯のほうも、口腔外科で、3ヶ月かかって、
美しい歯を入れてくれた。
歯ぐきは、まだ一部欠けている。
見えないから、いいけどね。
医学の力もすごいけど、
人間のもつ復元力もすごい。
今では、傷はほとんど目立たなくなった。
顔の造作も、事故前と変わらない。
でも、あの時、どさくさにまぎれて、
二重まぶたにして、
目の下のたるみをとってもらっていたら、
僕の人生は少し変わっていたかもしれない。
なわけ、ないか。
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