福沢諭吉さん恵
その娘は岩下良子といった。
小柄だけど活発な人で勉強もできた。
ただ見るからに「貧し」かった。
それだけに、その明るさが眩しかった。
ある日クラスのガキの一人にからかわれた。
「お前ん家のアパート、俺ん家のもんなんだぞ。」
自分の家来といわんとばかりの、その言葉に、
側にいた自分でさえドスンといやな思いをした。
それを伝え聞いた先生は、もっといやな思いになった。
「有田、お金を稼いでいるのはお前の親だ。
お前が金持ちでも、アパートをもっている
わけではない。お前に威張る権利はない。」
子供はみんな平等なんだ。先生はそう言いたかった。
名のとおった代理店があるとする。
そこに入社した若手の社員がいる。
しかし、その社員がその代理店の
名をとおしたわけではない。
最近耳にするプロダクションや、
フリーの方々の声の中に、
小学生の頃の、あの思い出がダブってくる。
「その仕事をベストなものにするために、
いちはやく自分に足りないものを見つけ出す。
それがディレクターだ。」
かの広告の神様、オグルビーさんの言葉である。
お互いに、足りない力をもらいあう。
そんな意識をもつディレクターの方々は、
やはり評判もいい。そして仕事もいい。
「いま、わたしには評判が足りない。」
オリコム CDルーム 谷口 知二
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