リレーコラムについて

いつまでも名コンビを。

内田しんじ

前回は、ビジュアルとコピーの関係、
素晴らしいボケと素敵なツッコミの話。
で今回は、それを生み出す現場にこそ、
二つのアイデンティティが必要なのだ、という話です。
つまり、「いい広告」は二人による発明に近いもので、
ライト兄弟のヒコーキに次ぐコラボレーションの
産物だったりして…。言い過ぎついでに、
ヒコーキはたまたま二人の結果だったかも知れないが、
いい広告とは、二人でしか生み出せない成果、
とまで言いたい。その最小単位は、アートディレクターと
コピーライター。この二人がいれば、アイディア
から定着まで、チラシからワールドワイドキャン
ペーンまでだいたいOK。二人がちゃんとしていれば、
何でも来い!です。でも、二人の間には、互いの
尊敬と批判の気持ちがあって、しかもそのバランスが
保たれていなければならない、という難しい関係。
本当にそんな相方をお持ちの方には、
ほら、もういい広告の頭が見えてますよ、
と声を掛けたい。あぁ、うらやましい。

じゃ、どうして広告づくりに相方が必要なのか。
ざっと、理由は二つ。一つは、何よりもコラボレートを
必要とする仕事だから。アイディアが生まれやすい環境を
つくるためです。もう一つは、ポピュラリティの
有無が広告の命だから。一人だと主観、二人なら客観。
マイリトルベイビーにならずに、アイディアに
ポピュラリティを持たせるためです。
とは言っても、いい相方は一生探してもなかなか
見つからないものですね。特に組織にいる場合は、
エラくなるとクリエイティブディレクター(CD)
とかになって、強制的に一人立ちの道へ。
それまでいい関係だった相方とも別々の仕事、
バラバラに切り売りされてしまいます。
このCD制度が、かなりマズイ。一人のCDが、
自分でボケて自分でツッコンでるわけだから、
すぐに限界がくるんです。結局、コピーが素っ単騎で
力んでる広告になったりして、あまり深みや魅力を
感じないものになったり…。

ボニー&クライドとか、いとしこいしみたいに、
いい相方に恵まれ、いつまでも名コンビを
組んでいられたらどんなに幸せでしょう。
そしたら、もっと『わかって、おもしろい』広告が
増えるのになぁ、とつくづく思います。

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