リレーコラムについて

みんな主義にヒューマンを。

内田しんじ

今回は、国際化の話。
広告代理店の国際化という外論ではなくて、
中にいる人の国際化という内輪の話です。
私は、TBWAという会社に勤めています。
いわゆる外資です。そこで、
「ね、今度のキャンペーンは、ヒューマンでいこうよ。」
という話にもなったりします。いくら英語をしゃべれない
私だって、何かこうジンとくるストーリーをうまく描いて、
殺伐とした世の中をポッとあたためるお役に立って、
出来ればそんなヒューマンな感じのキャンペーンで、
世界中の人をウルウルさせたいな、くらいのことは考えます。
ところが、このヒューマンが曲者です。
外国人、特に米国人の意味するヒューマンはあくまで個人主義、
個人のアイデンティティがベースにあるようです。
弱者である個人が対峙する大きな存在、組織、壁などに
立ち向かうこと。個人に対してがんばれというエールを
送ること。これが、何よりもヒューマンなのだそうです。
日本人の私には、一人ひとりががんばっていこう
というメッセージは、確かに元気づけられるけれど、
目頭を熱くするようなヒューマンなメッセージとは
受け取りがたい。なんかピンとこない。だって、
民主主義というよりもみんな主義が、
もう身に付いちゃっているから。ことあるごとに
Express Yourself!と言われながら大きくなった
人たちとでは、反射的に感じるものが違います。
そう言えば、ナイキもアップルもタグホイヤーも、
自分を信じろ!個人の力は捨てたもんじゃないぞ!
最後に勝利するのはあなた自身の力だ!なんて、あくまで
一人の人間を応援する立場を取ってますよね。
外国人にはこの語りかけが、たまらなくヒューマンで、
その会社まで好きになってしまうらしい。
どっちがどうこうじゃなくて、ギャップがあるのは事実。
おのれの取るに足らぬ脳ミソなり遺伝子なりが、
このギャップを呑み込んで、
国際基準に達する日は来るのだろうか。

『国際化は頭ではなくて、下半身から始まるのだ。』
             (某コピーライター談)
という、まったく別視点から照合してみても、
私の場合、可能性はほぼゼロである。

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