銀座本州ビル2階。ライトパブリシティの人々。
髙田美子
今日が、私のコラムの最終日なので、迷ったのですが
お世話になったライトの企画部の昔話を少し。
私が入社した頃、企画部には向秀男さん、土屋耕一さん、
秋山晶さん、朝倉勇さん、大塚由紀さん、菅三鶴さん、
日暮真三さん、というそうそうたる顔ぶれと、途中入社でまだ日の浅い
先輩の武田勉さん、今道正純さん、安念俊彦さん、影山光久さんの
新鋭4人がコピーライターとして同じ部屋で働いていた。
といっても、当時の私はそんなことは知る由もなかったのですが。
私のボスである向さんは、「ケンとメリーのスカイライン」と
書いた原稿用紙をみせて、「高田くん、どう思うかい?」とたずね、
土屋さんは伊勢丹の「こんにちは土曜日くん。」と
大きくキャッチフレーズが入ったゲラ刷りを
中央の机において、部屋のみんなの反応をたのしんでいた。
秋山さんは、当時から天才肌で「男は黙って…」を地でいくように
キューピーやサッポロビールをはじめ数え切れないほどの
名コピーをつぎつぎ生み出していく。
そのお隣では詩人でもある朝倉さんが、
「ドレミはイ・ロ・ハと同じです。」「さようなら人類。」など
どこか文学の香りの漂う格調高いコピーを書かれている。
菅さん、日暮さんのご両人は元気いっぱいで、
すばやく生きのいいコピーを書きまくっては、
ふざけて後輩たちを盛り上げ、夜は新宿にくりだしていく。
向さんのコピーのお清書や、文字数合わせに奮闘していたある日、
ここに入ったら、コピーライターになるより他ないんじゃない。といわれ、夜、コピーの講座に通うことにした。
同期生に土屋さんや秋山さんと一緒の部屋で働いていることが
知れると、さすがに羨望の視線が痛かった。
1年後、先輩の大塚由紀さんが独立されることとなり、
後を引き継いで初めての仕事をいただくこととなった。
宝石店の『ミキモト』である。由紀さんは「大丈夫よ。」と
励ましてくれたが、歴代の作品ファイルを開くと
土屋さんの名作「西のティファニー、東のミキモト。」など
素晴らしいコピーが並んでいる。朝倉さん、大塚由紀さんと
引き継がれてきた格調高い仕事を、果たして
私ができるのだろうか。初めて書いたコピーが入った校正刷りを
見ていたら、土屋さんが後ろから
「ちゃんと書いてるね。」さりげなく声をかけてくださった。
どんなにホッとしたかは、想像してください。
私が今でも思い出すのは、私の机だけが小さかったまぎれもない
あの頃のライト企画部の部屋なんですね。
みなさま、いろいろありがとうございました。
1週間私のつたないコラムを読んでくださって、ありがとう。
来週は、20年来の友人で、浅草でいちばんのコピーライター
三井浩さんです。ではあんちゃん、よろしくね。
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