メロスは駅の下!
石川透
なんのこっちゃ?と思われただろう。
実は3才の息子がここのところ毎朝見ているテレビがある。
「にほんごであそぼ」という、10分間だけの子供番組だ。
KONISHIKIや野村萬斎が出てきて、
子供たちといっしょに日本のポピュラーな詩や俳句や文章の一節を声に出して読む。
たとえば、『雨ニモ負ケズ』、『寿限無寿限無』、『徒然草』・・・。
ただそれだけなのだが、
言葉というものに関心を示しだした息子にはジャストミートしているらしく、
ふだんは見られないような集中力を発揮して注視しているのだ。
その中で、最近、『走れメロス』のコーナーがあった。
もちろん冒頭の「メロスは激怒した。・・・」のところ。
このフレーズが、これまた小さな脳のどこかにジャストミートしたらしい。
しかも不確かなまま・・・。
こうして「メロスは駅の下!」は
息子の口からしばしば発せられるフレーズとなった。
最初に聞いたとき、思わずふきだしてしまった。
と同時に、いいコピーに出会ったときに感じるのとよく似た感覚を覚えたのだ。
そう、思いもよらぬ角度からコトバとコトバがぶつかった、あの感じ。
そういえば、息子の口からは、ほかにも数々の迷コピーが発せられてきた。
たとえば。
駅のホームで。発車時刻を告げる構内アナウンスを真似て。
「プルルルル〜 ドアがしまります。50えんください!」
保育園でならってきたであろう歌。
「だーるまさん、だーるまさん、みだれっこしましょ〜♪」
これは相当なインパクトだった。
以来、数体のだるまがあられもない姿で絡み合っているイメージが
僕の頭から離れなくなった。
(イケナイ、イケナイ。子どもの前でオレはなんてことを・・・)
ともかく。
かつて誰も考えたことのない切り口(?)。
しかも、ウケを狙おうという邪心がないぶん
リクツぬきに強い!
こいつにはもしかしたらオレよりコピーの才能があるのでは・・・。
僕はすっかり面白がって、
何か担当の商品の名前を息子にインプットしておいたら、
そのうちなんかすごく画期的なコピーが生まれるかも?
そんなことまで考えてしまった。
これだから大人はイケナイ。
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