リレーコラムについて

山阪佳彦

子供の頃、近所にちょっと人気者のオジサンがいました。
なんでも知ってる、物知り博士のような存在。
でも、風貌が相当怪しかったんですね。
親たちからは、「あの人には絶対近づかないように!」
と毎日のように注意されていました。
でも、ボクらは、そんな事お構いなしで、
オジサンの話を楽しみにしていたんです。
「なんで蝉は、セミって言うか知ってるか?」
と唐突に聞くオジサン。その辺にいた子供は
誰も知りません。今だって答えらる人、あまりいないでしょうから。
そしたら、真顔でこんなことを言うのです。
「セミセミセミって鳴くやんか。そやからセミって言うねん。」
へえ〜。そうか。でも、いつもと違って、感心したのは私だけでした。
ツクツクボウシと鳴くからツクツクボウシ。
そんな話は知っていましたが、実際私の耳にはそう聞こえた事がありませんでした。
その点、オジサンの言うクマゼミの鳴き声は、確かにセミセミセミと
(正確には、シェミシェミシェミと)聞こえたんですね。
私にとっては、オジサンの説は、なるほど!と説得力のあったものでした。
そして、そのまま私は大人になりました。
そんな話は、ウソと分かった今も、
クマゼミは私の耳で、セミセミセミと鳴いています。(つづく)

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