悪夢か、現実か、夢か。
「阿部さん、あの試算表の、
bad、even、goodって、
悪夢か、現実か、夢か、なんです」
新しいことに挑戦する時、この言葉を今でも思い出す。
2017年、コンテンツの部署での仕事がはじまった。
「コピーライター/プロデューサー」
名刺の肩書きだけじゃなく、
日々の習慣も変わっていった。
ペンを持つ手は、電卓も叩くようになった。
パワポと同じくらい、エクセルを扱うようになった。
月末になれば、請求書のやりとりで慌ただしくなった。
そして肝心の仕事だ。
先輩から誘ってもらう仕事もある。
けれど、僕が所属したのは、コンテンツの部署の中でも、
コンテンツそのものを企画していこうぜ、という部署。
「制作」と「製作」の違いを明確に知った。
制作が、作品そのものをつくることに対し、
製作は、資金を集め、回収することを指す。
プロデューサーは、つくりたいものを見つけないといけない。
プロデューサーは、つくるためのお金を集めないといけない。
プロデューサーは、つくりあげた後に回収しないといけない。
僕は、映画づくりに取り組んだ。
会社は違うけれど同じ製作委員会にいたのが、
同世代のプロデューサーのYさんだった。
映画をつくるために資金を集めないといけない。
つくりたいものが見つかったとしても、
会社にGOサインをもらえるか、どうか。
やりたくて仕方がないけど、できないかもしれない。
本当に思い入れのある仕事は、
油断したらすぐに気持ちがこぼれそうになる。
言われたことをやることのほうが
ちょっぴり気持ちが楽なのはどうしてだろう。
認められなかったらどうしよう。
駄目といわれたらどうしよう。こわい。
現場で映画の話は進んでいく。待ってくれない。
現場に対しては「やれる」前提で話し、
会社には「やりたいです」と交渉していく。
いくつもの不安を呑み込みながら、僕は、
会社の審議に向かうための企画書をつくっていた。
WHY:なぜ、今つくるのか?
WHAT:どんな、物語なのか?
WHO:だれと、つくるのか?
WHEN:いつ、撮るのか?
WHERE:どこで、撮るのか?
HOW:どのように、マネタイズするのか?
5W1Hを明確にした企画書をつくることはできる。
ただ、お金の試算をするのがはじめての経験だった。
公開する劇場の規模数、動員予測、タイアップがつくか…
bad、even、goodに分けてシミュレーションしないといけない。
Yさんにこの話をしていて、
言ってくれたのが冒頭の言葉だった。
bad、even、goodは、悪夢か、現実か、夢か。
言葉が変わることで、グッと身近になった。
夢を見たいなら悪夢も知らないといけない。
悪夢を見るから夢は見えてくるのだ。
閻魔大王がいる会議。
そう言ったらわかりやすいだろうか。
悪夢行きか、夢行きかはわからない。
その入口に立つことは許された。
そうして出来た映画が、映画「アイスと雨音」。
そこには、はじめて知る現実が待っていた。
(つづく)
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