DNAってさ
(小さい頃の話)
思い返せば、父はいつも家にいなかった。
土曜日の朝になると、
「ガチャ。」っという音がして、
目を覚まし、父の姿を確認し2度寝をするのが恒例。
1週間帰ってこないことも、ざらにあって。
母はずっと、疑問に思っていた私と妹に、
「空き缶拾いの仕事で、色んな公園を回ってる」と言い聞かせた。
父もたまに帰ってくると、
「今日はカルピスの缶をたくさん拾った」とか
「今週はコーラの缶が多かったよ」なんて話をするので、
猛暑日も、雪が降る日も、
『お父さんは、ひたすら空き缶を拾っているんだ・・!』
毎日公園のベンチで、月明かりに照らされながら眠り、
私たち姉妹のために働いてくれているんだ・・と思っていた。
かれこれ20年。
仕事で名刺交換をした際に
「藤曲さんって、藤曲さんと関係あるんですか?」とたまに聞かれる。
珍しい苗字がゆえ、
相手が思い浮かべている「藤曲さん」は、
今のところ百発百中で、私の父のことである。
昔は、自分が知らない人に既に知られている感じが苦手で
「あ、そうですよね。」「珍しいですよね。」なんて、関係を誤魔化していた。
父と私は、顔もよく似ている(らしい)。
そして今、親子でコピーライターという仕事をしている。
空き缶拾いをしていた訳でないと分かったのは、中学生になってから。
きっかけは、なぜ年に一度、
10月になるとディズニーランドに行けるのか。を聞いて。
ただ、未だにどんな仕事をしているかは、はっきりとは分からない。
(少し戻って7年前の話)
祖父が亡くなった。
たまに遊びに行っていた祖父の家には、
茶色くなった新聞が壁の高いところに、いくつか貼られていた。
火葬前、父はその貼られていた新聞の一つを祖父の棺に入れた。
その頃、理由はよく分からなかった。
社会人になって、
厚い本を眺めていてようやく気づいた。
あの日、棺に入れていた新聞は、
父がコピーの賞をとった新聞広告だった。
(最近の話)
お盆休み。もう誰も住んでいない祖父の家へ行った。
時計の針だけが、変わらず動き続けていた。
壁に貼られている茶色の新聞。ぽっかり空いたスペース。
今度 帰るときには、
新人賞を頂いた新聞広告を貼ろうなんて、
名案を思いついたのは、つい昨日の話。
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はじめまして。
こんにちは。おつかれさまです。(4回目)
さすがにもう、同じ出だしはキツイなと思い、
雰囲気を変えてみようと試みたところ、
気恥ずかしくなっている、、藤曲旦子と申します。
やっと父と同じ仕事をしてると、素直に言えるようになりました。
具体的に何をしているのかは、未だに謎に包まれているのですが。
いつも楽しそうにしていた理由は、なるほど。という感じです。
*明日はコラム最終日。
きょうもありがとうございました。
asako.fujimagari@dentsu.co.jp
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