リレーコラムについて

一人ひとりへのI LOVE YOU。

阿部広太郎

当たり前のことを言うな。

 

そう怒られてしまうかもしれない。

けど、からだ全部で感じていた。

映画が封切りされる。

そして映画館で上映されている。

それは、まったくもって、

「当たり前じゃない」。

 

2018年3月3日。

映画「アイスと雨音」の公開日。

日付まで含めて、この日のことは、

これからもずっと忘れないと思う。

 

初日、渋谷の映画館「ユーロスペース」。

映画の出発を祝ってくれる大勢の方たち。

輝く瞳。紅潮した頬。人の賑わい。

お祭りみたいだった。

 

たとえば、もしもの話。

 

ドキュメンタリー番組で、

映画づくりの密着があったとしたら、

その日の出来事がクライマックスだ。

 

クラシック調のテーマソングとともに、

スタッフロールが流れてくる。

いい声のナレーターが締めくくる。

「戸惑い、まよって、それでも、

つくることをあきらめない。

その先の景色を見たいから・・・。」

 

そんなドキュメンタリーを、

僕も見たことがある気がするし、

そういうものだと思っていた。

 

けど、違った。

 

はじめて知る現実はここからだ。

 

「あ!埋まってる!」

「やばい…空席が。。。」

映画のオンラインチケット販売サイトを、

こまめにチェックしては、

一喜一憂する日々が翌日からはじまった。

 

こまかいことだが、

映画の席全体の埋まり状況を見るのは、

ワンクリックで見られる訳じゃない。

 

利用規約と注意事項にチェックしてクリック。

チケット枚数を選択してクリック。

いちにのさんで、ようやく座席状況がわかる。

 

すでに埋まっている席には☓がついている。

 

映画を見る側の時は、

☓が少なければ、

お、すいてて良かった!と思うけど、

映画を作る側になると、

☓の数だけ○をもらえた気分になる。

 

映画公開されてから舞台挨拶、

もしくはトークイベントを行う、

その動機はシンプル。ただただ、

お客さんに来てほしいからだ。

 

映画「アイスと雨音」も同様だ。

決して大げさではなく50回近く、

舞台挨拶を行ったのではないだろうか。

 

舞台挨拶が終われば、劇場ロビーで、

パンフレットのサイン会を行う。

監督と役者、お客さんが言葉を交わす。

その姿をプロデューサーとして見守る。

SNSで発信してくださる方がいる。

 

1000人、1万人、10万人・・・

あの時エクセル上でした動員予測。

ニュースで見聞きするヒット作が、

何十万人動員したという数字。

数字だけど、数字じゃない。

生身の一人ひとりがそこにはにいる。

 

僕がプロデューサーとして、

出来ることは何だ?

 

「I LOVE YOU」

私がいて、目の前にあなたがいる。

映画館に来てくださった、

目の前の一人ひとりに

感謝を伝えることだ。

 

当たり前のことだ。

 

でもその当たり前のことを、

やりきろうと思った。

 

こうも思った。

 

監督が、役者が、SNSで呼び掛けている。

僕自身も声掛けを全力でやるぞ、と。

僕の言葉に耳を貸してくれる人がいるかぎり、

魅力が伝わるように、発信し続けようと。

 

お客さんと映画を育てていく。

そのことを頭じゃなくて体で感じた。

3月から上映がはじまり、

初夏近くまでのロングラン上映をした。

第61回 ブルーリボン賞 作品賞ノミネートした。

 

それでも、

映画の資金回収はそう簡単じゃない。

劇場公開のみで回収できることは稀で、

DVD・Blue-ray、オンライン配信など、

ここまでやるか、と挑んでもまだまだ。

 

ただ、作品は生きている。

2017年と2018年に刻まれた思い出。

ともに生きていく、という感覚すらある。

 

「本当にやりたいことは、絶対止めちゃいけない」

そうコピーに付けた、

若者たちの1ヶ月を74分ワンカットで描いた、

映画「アイスと雨音」、Amazonでも観られます。

再生というスタートを切ってほしいです。

もしよければ、ぜひ。

https://is.gd/rCyaM3

 

動き続けるかぎり旬はつづく。

つづける中ではじまることもある。

 

(つづく)

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