リレーコラムについて

いちばん犯人ぽくない人物が、犯人という叙述トリックについて

河野正人

仕事とプライベートは分けたいタイプだ。
家で仕事のことを考えたくない、ということではない。

コピーライターで培った考え方を、
プライベートで使うとき、
罪悪感を感じることがある、という話だ。

たとえば、友達への送別のメッセージを考えるとき。
「自分が本当に伝えたい言葉」よりも先に、
「どんな言葉を書いたら相手は喜んでくれるだろう」から
考え始めてしまう。

たとえば、学校で嫌なことがあって落ち込んでいる娘に声をかけるとき。
「自分が本当に伝えたい言葉」よりも先に、
「どんな言葉を伝えたら明日も気持ちよく学校へ行ってくれるだろう」から
考え始めてしまう。

コピーライターになって、もう15年以上が経つ。
いつからか、そうなってしまった。

安易に設定されたゴールから逆算された言葉が、届くだろうか。
届いたとしても、そこに偽りはないだろうか。

プライベートでは、できる限り、
コピーライターで培った考え方を使いたくないと、思っている。

(続く)

仕事でも、プライベートでも、バスケでも、
お世話になりまくっている
山中康司さんからバトンをいただきました河野です。

前回のコラムの中にあった、
山中さんの距骨を脱臼骨折させた犯人は私です。

そのことを知った上で、
前回のコラムを読んでいただくと、
山中さんの優しさに触れられ、
味わいが違うはずです。
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