リレーコラムについて

「15秒に入らない企画をもってくるな」

佐藤舞葉

みなさん、今日打ち合わせにもっていくその企画、15秒におさまってますか?

 

入社1年目でクリエーティブに配属された私は、そもそもCMの企画をどういうふうに考えればいいのかよくわからなかった。(大喜利みたいなものだと思っていた)

そのくせ量だけは考えていったので、聞かされるほうからしたら、地獄の時間だったと思う。

それでも多くの先輩はそこからなんとか企画の「種」をみつけてくれて、私の企画にもなってない企画を優しく育ててくれた。

 

A先輩以外は。

 

忘れられないA先輩との最初の打ち合わせ。私はいつものように企画として未完成の企画を持って行った。

「おい、この企画は15秒におさまってんのか?」

「え…おさまってないですねえ…」

 

すみません。15秒におさまるかどうかなんて、プレゼン前に整えればいいじゃん。

そう思っていました。

 

「俺の打ち合わせに15秒に収まってない企画はもってくるな!」

えーっ!

「企画の種とかアイデアのかけらとかそういうものは要らない。完成されたものを持ってこい。」

「そういう種とか言うものを永遠と聞かされる時間は俺にはない」

「数はいらない。採用できるものがたったひとつあればいい。おまえはそれを持ってこい」

 

この人、他の先輩と何もかもいうことが逆だ…。

「新人は、とにかく数を持っていく」

「新人に期待されているのは、完成された企画じゃなくて、新鮮な視点」

 

そう思い込んでいた私は、しぶしぶ、A先輩との打ち合わせはちゃんと15秒におさまりかつ成立している(と思われる)企画のみ持っていくようにすることにした。

 

ところが、

そうすることでわかったのだ。

完成された企画を考えるためには、恐ろしく時間がかかるということを。

私が新人のころ企画の「種」とか言われるものを100個も200個も机の上に並べることができたのは、「それが着地するかどうか」をCDに丸投げしていたからなのだと気づいた。

 

「完成された企画がひとつあればいい」といわれたが、

そもそも「完成された企画」を100個も200個も考えるのは無理なのだ。

 

そこから、企画をCDに丸投げしない。ちゃんと責任をもって自力で完成させる。そいう能力が徐々に芽生え始めた。

 

「他人任せだと、いつまでも他人から任せられない人間になるぞ」

とA先輩は言った。

 

今思うと、A先輩は、いつまでも「ケツを持つ」感覚のない私に、なんとか当事者意識を持たせようとしていてくれたにちがいない。

 

いや、本当にただ、早く帰りたかっただけなのかもしれない。

 

NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
5801 2024.11.18 中川英明 育児フォリ・ア・ドゥ
  • 年  月から   年  月まで