リレーコラムについて

うつわ

小川祐人

コロナ禍で、新しい趣味ができた人も多いと思います。

僕の場合、それは「うつわ集め」でした。

 

集め始めると沼のようで、ここ数年は服を買うのが減った代わりにうつわにかける出費が増えました。

自分の中のルールとして、買うものは作家さんの一点もの。

そしてなるべく、ご本人に会って話を聞いたものを買うようにしています。

 

もともと日本酒が好きだったこともあり酒器は集めていたのですが、

とある仕事で展示会の手伝いをすることになってから色々勉強する機会も増え、

作家さんへのインタビューも重ねました。

 

彼らの、ものづくりの中から捻り出された言葉。

これがとても勉強になるのです。

いくつかをご紹介します。

 

 

シンプルとは、削ぎ落とすことではなく、

圧縮させることなんです。

怒ること、争うことが原動力です。

自分のつくったものでも、人が救えると信じたい。

マーケティングではなく、目の前の土と火に向き合ってつくります。

「大丈夫だよ」って想いと、「大丈夫か?」って想い。

その両方の気持ちでつくってます。

未来とか、進化とか、ちょっとうるさすぎませんかね。

好きに使ってください。

ただ、私のうつわは丈夫です。

 

 

業界も、つくるものも違う。

なのに、不思議と深く染み入る。自分の仕事を省みて背筋が伸びる。

そんな感覚があります。

 

石川県の能登で漆器の塗師(ぬし)をされている方がいます。

人柄、ものづくりへの姿勢含め、僕が最も尊敬するオトナの一人です。

その方があるとき、飲みながらこんなことを言っていました。

 

うつわの形をつくることは、

あり得たかもしれない無限の線の中から、

たった一本を選び取ることなんです。

 

この「たった一本を選び取る」という言葉は、極めてフィジカルで、同時にそこには恐ろしいほどの緊張感が詰まっているように感じます。

 

それを使う人を想像し、過去の系譜や土地に敬意を払いながらも、現代において再解釈を加えてゆく。

内圧や外圧みたいなものが迷いないひとつの輪郭として現れ、みんなにとっても「これしかないよね」という最大公約数になる。

 

あえて仕事の話に結びつけるならば、これはコピーライターとしての自分が「一本のコピーを選ぶ」ときの態度として学ぶべきことのように思ったのです。

 

「うつわのようなコピー」をつくる。

 

そう言うと何だかとても偉そうにも聞こえてしまいますが。

「手の届かないところに飾っておくお守りのようなもの」よりも、

「みんなが使いたくなる道具のようなもの」をつくることを、今の自分の目標としています。

 

願わくば、自分がいなくなった後も誰かに使われ続けているようなもの。

ありきたりな言い方をすれば、「忘れられないもの」ということかもしれませんが。

 

そんなことを考えながら、最近ついに陶芸教室に通い始めました。

この先自分がどこに向かうのか、いよいよ、よくわかりません。

 

 

次は、会社の後輩の岩田泰河くんにバトンを渡したいと思います。

ある日、何の前触れもなく坊主になっていたり、ピアスが空いていたりする。

仕事では頼もしさがありながらも、パンクさも忘れない。

そんな男です。

 

一週間、お付き合いいただきありがとうございました。

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