お祭り2
「す、すみませんっ!」
とりあえず謝っておこう作戦を試みるも、男の手は止まらなかった。
それどころか、
私が持っていたガイドブックを勢いよく取りあげ、投げ捨てたのだ。
えええ!マジですか!
こっちはワケがわからないですけど、
一応ちゃんと謝まりましたし、無抵抗ですよ?
この人マジのヤバイ人だ、オワッタ・・・。
混乱と恐怖で硬直していると、
今度はかけていたサングラスも取りあげられた。
今までサングラス越しにモノクロで見えていた男がやけにカラフルになり、
こちらを睨む眉間のしわもよりくっきり見える。
もう私はパニックの最高潮だ。
「これでOKだ。」
そう言いながら、
こちらに睨みをきかせている男の口元がなぜか少しニコッとしている。
えっ・・・
愉快犯なの?なんなの?
なんにもOKじゃないから!
もうこの人、話が通じない。ホントにオワッタ・・・。
この男のヤバさを察しはじめた私。
すると突然ドンッ!と顔に衝撃がはしり、
赤い液体がぽたぽたと垂れてきた。
血だ、とうとう私、あいつにやられちゃったんだ。
本当にこれで終わりなんだ。
そう覚悟した瞬間、なんだか青臭い匂いがした。
え・・・
これ血じゃない。
トマトだ!!!
完熟トマトだ!!!!!
(つづく。)