お祭り3
ナンジャコリャーアア!!!
世代じゃなくても思わず叫びたくなるほどのナンジャ感。
でもトマトにやられていたのは男も同じだった。
そして、もっと言うと周りいる人たちもくらっていた。
飛んできたトマトをキャッチしては投げ、雪合戦状態だ。
すると再び私の顔に、
というか鼻に、さっきより強い衝撃がはしる。
もちろんトマトだ。誰かが投げたのだ。
けれど今度は完熟していなかった。
想像してほしい。
完熟していない、わりとしっかりとしたトマトを。
それはもう、トマトじゃない。
ほぼソフトボールだ。
それが結構なスピード感をもって鼻を直撃したのである。
大人になってから初めて、痛みで涙が出た。
「お前も投げろ!」
男が落ちていたとトマトを拾って私にくれた。
私はさっき私の鼻に命中したのが飛んできたであろう方向を目掛けて、
力いっぱい投げた。
よけたり、拾ったり、投げたり。
同じ方向を向いて無心で参戦しているうちに、
男と私の間にはちょっとしたチーム感ができた。
すべてが終わってから分かったことなのだが、
スペインではあの有名なトマト祭を模して、
他の小さなお祭りでも、
トマトを投げ合うことがあるらしい。
それを知らずに、合戦の最前線に紛れ込んでしまった私に、
ケガをせずに楽しめるよう気を遣って、
男はガイドブックやサングラスを外してくれていたのだ。きっと。
(少々荒々しかったけれど。)
ヤバいやつだと思っていた人と、
小一時間で仲間になり、
後からこんなに感謝することになるなんて。
これからの
人との出会いがちょっと楽しみになったスペイン旅行でした。
(おしまい)