ことばの手ざわり
「記憶のえんぴつ」とは。
とその前に、”高輪築堤”をご存知でしょうか。
明治5年、日本で初めて鉄道が開通したとき
海上を走る線路を支えた築堤のことです。
土地の埋め立てなどによって
地面の下に長らく眠っていたのですが、
2019年、高輪ゲートウェイ駅周辺工事中に
その一部が半化石化した木材として出土しました。
経年変化した独特な木の色合い。
荒々しくもどこかやさしい手ざわり。
内部が乾かないまま空気に触れ続けると
どんどん朽ちてしまうため、
えんぴつという新たな形に変えながら
その記憶と一緒に手もとで保存していこうという
obakeとKOKUYO DESIGN AWARDを
中心とした共同プロジェクトです。
職人さんの度重なる試行錯誤のおかげで
構想を現実のものにすることができました。
えんぴつを握ったときの手ざわりを通じて、
はるか遠い記憶の継承を目指しています。
‐‐‐‐
えんぴつ1本、約三千円。
ありえないと思います。
ですが、
大量生産を前提とした鉛筆の製造では
決して成し得ないえんぴつのつくり方なのです。
一つひとつ丁寧に作り上げてくださる職人さんに
できる限りきちんとお仕事としてお願いしたかった。
何度も議論を重ね、この価格が決定しました。
じゃあ、ことばは何ができるのか。
販売はオンラインのみと決まっていました。
最初は少しプレッシャーに感じていましたが、
完成したえんぴつに触れたときには
ああ大丈夫だと思いました。
本当にいいものは
素直にそのままことばにすればよいからです。
歴史や調査は、口で語りかけるように。
つくり手の苦労や想いは
できるだけ本人の文章を用いながら。
本物だと感じてもらえるような
手ざわりのあることばで
お伝えできたらと思いました。
(サイトは2023年10月13日に公開します。
もし覚えていらしたらのぞいてみていただけたら
うれしいです。図々しくてすみません)
いろいろ振り返って。
これから先、
自分の信じられるものを
信じられることばに
していきたいのだと思いました。
〜〜〜lalala lalala lalala la la
終わりです。
ここまで読んでくださった方に、
こころより感謝申し上げます。
お次は、
大阪でお会いできて嬉しかった先輩のお一人、
茗荷 恭平さんにバトンをお渡しします。
大原漢太郎さんと一緒につくられた
「アイム」という写真集、とっても好きです。
茗荷さんの目から見える世界を
私はのぞいてみたいです。
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