ことばの直売
「地べたの文学」とは。
「私が暮らす地べたがあり、
その地べたが連なり、
私たちの日々の生活がある」
『現代建築家コンセプト・シリーズ27 ドットアーキテクツ|山で木を切り舟にして海に乗る』(家成俊勝, LIXIL出版, 2020)より
北加賀屋を拠点に活動する
dot architectsの家成さんのことばから
着想を得て題名をつけました。
暮らし始めたまち北加賀屋の
風景や出来事、うわさ話を
カメラのシャッターを切るように
ことばで記録した小さな本です。
道路でまどろむ野良猫や
車にぐしゃっと轢かれたびわの実、
そよ風に揺られる長い雑草、あるいは、
土地と密接に関わりながら
暮らす人々について書いてます。
‐‐‐‐
手軽に本がつくれると知って、
ZINEをつくりはじめました。
そして売ってみました。
会社にいた頃のいわゆるクライアントワークは
自分が書いたことばを→
優秀なADの方によって素敵にデザインいただき→
クライアントさんにチェックいただき→
様々な方が関わり合いながら→
OOHやTVCMやデジタルになって→
たくさんの人たちの生活に届く。
(これを仕事でやらせてもらえてたって
ものすごく幸せなことです、今思えば特に)
一方私のZINEは
自分でつくったら→
そのまま誰かの生活に届く。
たくさんの人に届くことも素敵だけど、
一人の人にすぐに届けられることも
なかなかいい。
ことばを直売している感覚です。
受け取った人の顔を把握できるから、
ありがとう、と伝え合ったり、
ここはこうだね、と気付き合うこともできます。
「地べたの文学」を北加賀屋で直売したときは、
ああ、あの場所ね!あの人のことだ!と
分かってくれる人と同じ目線で対話できてうれしかった。
最近知ったのですが、
かつてブラジルでは
その土地に暮らす人々がつくった詩のZINEを
”道ばた”で売る習慣があったとか。いいなあ
出版社を通したりしない分
届くまでのスピードが速く、
ジャーナリズム的な一面や
個人の意見を発信する役割も担っていたみたい。
「コルデル文学」と呼ばれる民衆文学だそうです。
私もまちに暮らす「民衆」の一人として
書いたことば(あえて”文学”と呼びたい)を
道ばたで売る職業いいなと、
ひそかな憧れがあります。
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