クレイジーモンキーマジック
仏に仕える身でありながら、弟子を食べた(と思い込んだ)三蔵は、
ショックのあまり発狂します。ついにここで、狂乱モード発動です。
その後、一行は無事に街へと降りたものの、頭がおかしくなった三蔵は
夜な夜な歓楽街に出かけては、酒を浴びるほど飲み、
女性たちといっしょに遊郭で踊り狂うようになります。
そう。三蔵は妄想で、自らを猪八戒だと思い込み、
女性と見ればセクハラをし、食べ物を見れば醜くがっつくようになっていたのです。
(これはこれで、ものすごい猪八戒に失礼ですが)
とき同じくして、街へと降りてきていた猪八戒は、悟空・沙悟浄とバッタリ再会。
しかし、ここも一筋縄では解決しません。
お互いに、相手は凍死したと思い込んでいるものだから、お互いを幽霊だと思いこんで大騒ぎ。
猪八戒は、ニセモノの金斗雲のようなものに乗って逃げていき、
それを悟空がホンモノの金斗雲に乗って追いかけます。
ところが、普段から整備不良の猪八戒の雲は、プスプスと煙を上げ、十分なスピードが出ません。
その出力不足をおぎなうため、猪八戒は
「自らの鼻息を後方に向かって吹き出し、それをターボ代わりにする」という荒業をやってのけます。
まさかと思われるでしょうが、これは劇中で実際かなりのスピードが出てました。
車がエンストしたときは一度やってみてください。
この悟空と猪八戒のチェイスシーンは、約5分以上つづきます。
おそらくテレビ史上、最もしょうもないチェイスシーンです。
で、最後はみんなの勘違いだったことが明らかになり、三蔵も正気を取り戻し、
ラスト2分ぐらいで(急!)、めでたしめでたしチャンチャン…ということになるのですが。
いかがでしょう。長々と振り返ってきましたが。
カニバリズム、裏切り、精神崩壊、小学生ギャグ…まさに煮えたぎるアナーキー。
こんなに面白い話があることに感動すら覚えませんか。
ところで、いきなり話は変わりますが、
ボクは以前から、自分自身という人間の面白さに、ややコンプレックスがあります。
広告クリエーティブという異能集団に属していながら、
中味がすごい平凡というか、自分がいかにも常識的で保守的で
型にハマッた人間なような気がするのです。
変わり者に見られたがってるけど、すんごい普通の人というか。
だから、自分自身の話をするのは、実は得意ではありません。
自分の内奥からは、そんなにおもしろエピソードが出てこない気がするからです。
(よくやる男子校の話も、ボク自身というよりは、環境や友人の話です)
でも、だからこそ、面白い人や面白いものを見つけたときには
無性にうれしくなってしまい、その魅力を皆に言いたい!と、勝手に熱くなってしまいます。
今回の西遊記の話もしかり。「オレが伝えねば!」と謎の使命感にかられます。
数年前に、実の姉のブラジャー事情をほじくり返して、
それを公共の電波で流す、というラジオCMをつくったことがありますが、
それも、「コイツおもろいなあ」と、我が家族ながら感じたからにほかなりません。
数年前に亡くなった母にも、よく
「あんたは一族イチおもんないで」と、叱咤されていました。(きびしい母でした…笑)
でも、
たとえ自分自身が面白くなくても、
面白いものを紹介する人には、なれるかもしれない。
作曲はできなくても、
掘り出し物のレコードでサンプリングなら、できるかもしれない。
もし、いまボクと同じように自らの才能や個性の欠如に悩んでいる方がいたら、
そうやって勝手に、自分以外の面白いものの広報官になるという手があるよ、
それはそれですごい楽しいよ、ということは最後に記しておこうと思います。
そんなわけで今回も、延々と中味のない話を失礼いたしました。
ありがとうございました。
来週のバトンは、ボクの隣の席にいらっしゃる
「死ぬときぐらい好きにさせてよ」のコピーで有名な太田祐美子さんです。
太田さんワールドをお楽しみに。
(注)
今回の西遊記のエピソード話は、再見当時あまりに感動し、勝手にたぎって書いた文章を、今回用にリバイスしたものです。おそらくどこにもアップしてなかったと思いますが、もしボクの記憶違いで既に見かけたという方がいたら申し訳ございません。
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