タイゲン
「お母さん、なんで潤一郎って名前なの」と、
名前の由来を聞いたのは大学生か社会人になりたての頃だったとおもいます。
ずいぶん奥手ですよね。
「あれ?言わなかったっけ。谷崎潤一郎よ」
…めっちゃ文豪じゃん。
大人になりすぎていたせいかいろいろ追求するのが怖く、
谷崎潤一郎の本を読む勇気が湧いてきませんでした。
両親がどんな期待をしていたのか知るのが怖い。
谷崎潤一郎がどんな評判の作家だったのか知るのが怖い。
20代中盤くらいだったと記憶しています。会社の読書好きな同僚から
たくさん本を借りることがありました。昔の小説っていいんだよーって。
運命(さだめ、デスティニー)ですよね。一冊だけ、谷崎潤一郎が入ってました。
なかなか手が伸びないまま時間だけが過ぎていったのですが、
こう見えて意外と謙虚なタイプなので読まずに返すのはなぁとページをめくりました。
いや、そもそも、タイトルが『痴人の愛』って時点で覚悟していたんですけどね。
…めっちゃエロいじゃん。変態じゃん。
ちょっと待ってお母さん(あるいはお父さん)。
15歳のナオミを妻にしようとして逆に破滅されられるとかパンチ効き過ぎてない?
ていうか当の本人、親友に妻を譲ろうとしてたり何かとすごいよ?
以来、なぜ谷崎潤一郎から名前をもらったのか聞くことができていません。
いや、他にも『春琴抄』『細雪』『陰翳礼讃』とか読むべき作品があるのはわかっているのですが。
名は体を現すとか、生き方は顔に出るとか、
自己管理力はそれこそ体型に出るとか言いますが、
両親が谷崎潤一郎からなぜ名前をもらったのか?
母方のお父さんは「10文字もある名前なんて長いだろ!ジュンとかジュンイチにしなさい!」と
反対したにもかかわらずなぜ押し切ってまで潤一郎にしたのか?
いつか僕の姿を見て「ほら、谷崎っぽく育ったわね。うれしいわ」と
言ってもらえる日が来るようにがんばります。
まずは谷崎潤一郎の作品を読んでみることから、やり直します。
今日も読んでいただきありがとうございました。